覇王伝__蒼剣の舞い2
2
あそこですと、彼は指さした。
赤茶けた岩山に埋もれるように、古い建物がある。
建物と云うより、遺跡と云う言葉が正しいかも知れない。
ハオンの話では、赤の谷が出来てからと云う。
「問題は、何処に清雅さまがいるかだ。今の清雅さまは龍王剣をもっていないからな」 「___」
四獣聖はお互いの存在を、持つ剣で知る事が出来る。だが、清雅と龍王剣は別々にあり、龍王剣の場所は理解っても清雅の居所は理解らない。
更に、お互いの剣の共鳴で白い影たちがこちらの存在に気付いてしまう。
そんな中、白い影たちが騒いでいる。
「まさか、もうこっちの存在が?」
「いや、違うな」
「うわぁっ」
「朱雀さま、大きな声を出さないでください…」
振り返った拓海の目に、見慣れぬ少年が立っていた。
歳は拓海より若い、十四、五といったところだろう。突然、焔の背後に現れたらしい。 「君は___誰?」
「まぁよくも、揃って…」
「ちょっと、タクちゃん。このクソガキ、僕の口いきなり塞いだんだぞっ」
「フン、てめぇがガキだろ」
「…このっ」
「朱雀さま、子供相手に大人げないですよ」
「だからガキだっていうんだよ」
「白虎さま、玄武さま何とか云ってください」
「焔、拓海の云うとおり大人げないぞ」
悔しがる焔の前で、謎の少年はフンと鼻を鳴らす。
「君、何処から来たの?」
「___あそこ」
指さす先は、遺跡の中だ。
「どうして、中から」
「俺もよく理解んねぇ。いったいどうなってんだか。ま、お前らと会えたのは良しとするか」
___態度デカっ。
拓海は、笑顔を引きつらせながらタラリと汗を流す。
「吾たちを知っているのですか?___えっと…」
少年は、ちらっと焔を見て面倒くさそうに頭を掻く。
「___セイ。それでいいわ、いまのところ」
そういえば、何となくあの人に似てるな。
拓海は、妙に納得してしまうのであった。
そんな彼らに、レオが加わり、彼には珍しく口をあんぐりと開けて驚いている。
「なんじゃぁ、こりゃぁ!?」
「何だ、あんたもいたのかよ」
セイが云う間もなく、レオが彼の腕を引っ張っていった。
「ちょっと、レオンの知り合いなわけ?あいつ」
「そ、そのようですね…」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍