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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 キィ…ン。
 高く短い音が、ピタリとそれを止めた。
 「___覇王…」
 白い人影が、口を開いた。
 「ちょっと、セイちゃん何て答えのさ」
 「俺は何も答えてねぇよ」
 答えたのは。
 「蒼剣を持っておられるな?」
 白いものは、人の姿をなし声を改めて聞いてくる。
 「あぁ」
 「やはり、蒼剣が教えてくれました。この者、吾が選びし者なり、と。つまり、貴方は覇王という事」
 「それはどうかは知らんが、俺は覇王になろうって気はねぇしな。さっさと面倒な事片づけて、のんびりしたい気分だぜ。それが、こいつの所為で、黒抄と白碧がそれを許しちゃくれない。だったらあの二カ国倒せとけしかける人間もいる。四国の為に、そうしろとな」
 「それで?」
 「無理だな」
 「ちょっと、清雅さま?」
 「向こうは大国、その国軍相手にこっちはまともに戦えるのは数十人。今だって王都を護っているのは百いるかどうかの蒼国軍。百戦錬磨と云われる黒抄国軍が山越えして攻めてこようってのに、勝算はねぇよ」
 「随分はっきりといわれる」
 「ここにいる者だちだって同じ事を思ってるさ。本当なら、こんな所にいる場合じゃないんだが」
 「同じ事を、数十年前に聞きました。ふふ、そういえばよく似ておられる。前覇王に」
 男の顔に、敵意はなかった。
 「貴方は、遺跡の管理人ですね?」
 「既にこの身は、百年以上も前にこの世のものではなくなりましたが。吾の名は、ロウ。覇王が来るのを待っておりました」
 ロウは、そう云って清雅の前に膝を折った。

 臥龍山には、亡霊が出る。
 清雅がその噂を聞いたのは、蒼王となって暫く経ってからの事だ。
 「亡霊?」
 「らしいですよ。その男の話では」
 いつもように尚武の邸宅に寄って、何気ない会話に混じった噂話。
 「お前、信じてるのか?その話」
 「この国の人間の多くは信じるでしょうね。子供の時から、臥龍山は聖域だと聞かされて育ってますからね。清雅さまも聞いていらっしゃるでしょう」
 「そういやぁ、おふくろが云ってたな」
 「東領は、四神・蒼龍の守護区域。そもそも四国誕生は、四神を基に造られたと云われてますから。その蒼龍を臥龍山に祀ってあると古くから云われてます」
 故に、臥龍山は聖域と云われてきた。