覇王伝__蒼剣の舞い2
「うわぁぁぁ…!」
「何事だ!?蒼国か」
「陛下、あれを!」
「な、何だ!?」
白いものが、ゆらゆらとそこにあった。
人の姿をなしつつも、剣では切れず、切っても宙で繋がってまたユラユラと揺れる。
「す、須黒、こんな話聞いておらぬぞ!」
「吾も聞いてはおりません」
「なに…」
「誰ダ…、聖域ヲ侵ス者ヨ。オ前タチノ目的ハ…、カ」
「何を云っているのだ?」
「覇王か?と云っているのです」
「答エヨ。オ前ハ、覇王カ」
「そうだ。吾は黒王・黒狼。この四国の覇王たる者」
「オ前ガ、覇王?蒼剣ハ何処ニアルノダ?アレナクシテ、…ヲ開ラレヌ。オ前ハ、覇王ニ非(あら)ズ」
白い人物たちは、ユラユラと揺れながら黒抄軍を囲み、彼らはパニック状態に陥った。
何よりも、黒王本人が怒りのままに軍を指揮した。
「斬れっ!!吾を…吾をよくも…っ。切り刻めっ!!」
激する黒王を、須黒は冷ややかに見つめている。
加勢する事もなく、ただ見つめ、唇をニッと歪ませて。
そして、その白いものは清雅たちの前にも現れていたのである。
「___誰ダ。オ前タチハ誰ダ」
「清雅さま、これ…」
「どうやら、亡霊は本当にいたようだぜ」
「オ前ハ、覇王カ?」
白いものは、黒抄の時と同じように間合いを詰めてきた。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍