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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 そんな山に、男が侵入した。彼は他国からの移住者で、聖域だと知らなかった。唯、宝が埋まっていると信じ掘り出すために侵入したのだ。
 「で、亡霊が出たと?」
 「ええ、白い男の亡霊がユラユラと追いかけてきたと。殆ど正気をなくして戻ってきたので、真偽は理解りませんが」

 「それが___」
 拓海は、少し青ざめながら目の前の男を見た。
 百年以上も前にこの世の者でなくなっている為に、亡霊なのは亡霊だが。
 「吾が一族は、遺跡に住み、覇王を待っていました。三百年間ずっと…。ドラゴンの遺産を受け継ぐ者が現れるのを」
 「でも何故、覇王なのさ」
 「転生と云う言葉を信じますかな?」
 「転生?」
 「三百年前、天から下った龍が人として転生し、地上の覇王となる。その地は永遠に反映し、戦もなくなる。吾が一族にはそう伝えられております。しかし、十数年前までその覇王は誕生する事はなかった」
 「前覇王陛下は、やはりここに来たんですね?」
 「はい。蒼剣を手にされ、ここに導かれたと申しておりました。ですが」
 「___覇王は、龍の転生ではなかった」
 「清雅さま」
 「はい。蒼剣を目覚めさせられませんでしたので」
 「天を裂くと云うあれ?」
 「蒼剣に選ばれ、力を引き出したものが真の覇王と云われているからな」
 前覇王は、それでも後悔はしなかった。
 自分が真の覇王ではなくても、この四国がいつか真の覇王によって永久に平和なる地になれば。蒼剣は、きっとその人物を見いだすだろう。
 本来の持ち主を。
 「ロウさま、もし…もし、その真の覇王が死んだり殺されたりしたらどうなるんですか?」
 拓海の言葉に、皆の視線が注がれる。
 「蒼剣は、永遠に彷徨い続ける。それは四国も同じ。真の覇王でなくば、四国は更に乱れ、ドラゴンの眠りも目覚めぬままに」
 「ドラゴンの眠り__」
 「四国には、それを起こすものが埋もれている。その一つが、天狼星だ。後残り六つあると云われているが」
 「それが、ドラゴンの遺産なんですか?」
 「さぁな。覇王家崩壊と共にそんな風にいわれているらしいな」
 ロウは、彼らを案内しながらそこに着いた。
 「これは___…、清雅さま!」
 振り向く拓海に、清雅の顔は厳しい。
 そこには、赤の谷と同じ壁画があった。