覇王伝__蒼剣の舞い2
「赤の谷と同じさ。その遺跡も遺産を隠す為じゃなく、秘密を隠した。覇王すら見つけられずに現今も生まれてるドラゴンの遺産、その秘密を隠したのさ」
「天狼星が遺産の手かがりを?」
「だから、あの白碧が襲ってきたんだろうさ」
「黒抄だけでも大変な今、白碧まで相手してられないって」
やるしかない。
全員が、そう思った。
蒼国は、他三国に比べ小国で勢力も弱いが、自然豊かな国である。
覇王時代には、北側に広がっていたが黒抄の勢力に領地を奪われ、山一つ向こうは既に黒抄領である。
その山の名を、臥龍山と云う。
「ここしかねぇな」
地図を睨んでいた清雅が、呟く。
「蒼国に一番近いですからかね。でも、ここは聖域ですよ」
「聖域?」
拓海が、語尾を上げる。
「そう云われている。吾は父から聞いただけだ」
「星宿の父君って、元白虎ですよね?」
「ああ」
一同の視線は、再度そこに注がれる。
地図の中の、臥龍山に___。
数時間前、黒抄の精鋭は僅か数十人で現れた。
引き返し隊を整え戻って来るのに一番近いのは、この臥龍山国境なのだ。
そして、最も王都に近い。
故に、何としても国境を越えさせるわけにはいかない。
「偶然か?」
清雅の呟きが、再び漏れる。
「清雅さま」
「奴らは、単に蒼国(うち)を攻めるだけに臥龍山の国境にきたのか?聖域だって事を奴らが理解しているか知らんが、もしそうだったら話は変わってくる。いくら近道とは云え、これから戦いに来ようって時に山を越えるんだぜ。そんな事をしてうちと戦える力が残っているほどこの臥龍山(やま)は柔じゃねぇと思うぜ」
「目的は聖域、ですか…」
「ちょっと、蒼国攻めはついでって事?」
「これまでの黒抄とやり方が違う」
「そもそも何故、聖域なんですか?」
星宿と焔のやりとりに、央軌が口を開いた。
「___天狼星は、臥龍山から持ち帰ったものです」
「央軌さま、もしかして天狼星を持ち帰る前に入った遺跡の場所って…」
「臥龍山だ」
清雅は、やっぱりなと云う顔をした。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍