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覇王伝__蒼剣の舞い2

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第9話 臥龍山


                 1
 蒼国国境___見下ろす人影に、もう一人男が加わって背後で口元を綻ばせていた。
 「まさか、こんなに早く蒼国を手にいられるとはな」
 「黒王陛下自らお出ましとは思いませんでした」
 「そなたたちを、信用してなかったわけではないのだが」
 黒王は、クククと笑いながら少し離れた所に立つ武人を冷ややかに見つめた。
 白銀の鎧に一人身を包むその男は、白碧の人間だった。
 一応対立関係にありながら、裏では手を組む。元々は、白碧国主・聖連の策だが、黒王は白碧も聖連も簡単に信じてはいない。
 表では、義兄上こそ覇王だと云いながら何を考えているか理解らない。ああ云う男に限って裏の顔もあるのだと黒王は思っている。
 「陛下、蒼王はドラゴンの遺産を知っておりました」
 「ほぅ」
 「更に、遺産の手がかりとなるものが蒼国に持ち込まれた由」
 「それも清雅の手にあると?ふん、益々気に入らぬ。蒼剣といい、遺産の手かがりといい、清雅に集まりおる。闇己、義勝、何としても清雅を殺せ。蒼剣を今こそ奪うのだ」
 「蒼国に黒抄精鋭軍と戦える戦力はございません。敵は四獣聖たった四人」
 「ククク…アハハハ」
 黒王の勝ちに満ちた高笑いを聞きながら、須黒は冷ややかだ。
 ___そう上手くいけばいいのだが。
 そんな彼らの動きは、当然蒼国に伝わっていた。
 「戦になるんですか?」
 「蒼国に入る前に防がないとな」
 「星宿さま」
 心配そうに見上げる拓海の前で、星宿は落ち着いている。
 「狙いは、いろいろだろうぜ。まったく欲の深い野郎だ」
 その狙いの一つに、自分の命が入っているにも関わらず清雅は鼻を鳴らした。
 それがどうした、と云う顔である。
 蒼剣に遺産の秘密に、清雅の命、更に___、
 拓海の視線は、央軌の姿に気付いた。
 彼が持参した一振りの剣。
 「清雅さま、黒抄もこれは欲しいでしょう」
 前覇王が、託したという剣“天狼星”。
 「遺産繋がり、か?」
 「覇王陛下は、これを遺跡にて持ち帰りました。丁度、蒼剣を手にされたのと同時期に」
 「それって…」
 「蒼剣か天狼靖か、どちらかがお互いを引き寄せた、なぁんてどう?」
 「ありえますね」
 焔の言葉に、星宿が賛同した。
 「それで、その遺跡にはそいつだけだった」
 「清雅さま?」