覇王伝__蒼剣の舞い2
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青白い炎が、ボ…と軽く燃え上がる。
本来火とは、赤いかそれに近い色なのだがここにあるのは青い火だ。
火なのに冷たい印象を与えるのは、それを見つめる男の眸も同じだ。
金色の眸は、一族最高を示す。
三百年前絶えたといわれる一族。その末裔にして前覇王の第二子。
「須黒が、天狼星を見つけたそうだよ」
声は穏やかでなかなかの美声だが、どこか冷たい。
「……」
「ドラゴンの遺産、誰が見つけてくれるだろうね。ふふ…義兄か、それとも義姉か、それとも吾が白碧か…、誰にしろいずれは吾もの。彼らにはもう少し頑張って貰わないとねぇ」
クスクス笑いながら、白王・聖連はいつものように鏡を撫でる。
その口調に、たっぷりと皮肉を込めるのを忘れずに。
側では、日影が唇を噛み締めていた。
蒼剣奪取の作戦に、二度も煮え湯を飲まされ顔と腕に傷を負った白い影首領の日影は、その胸に新たに憎悪を込めていた。
七年間、蒼王を観察し黒抄を操り襲わせ、それでも奪えなかった蒼剣。
___清雅を、甘く見ていたようだね。
戻った日影に、聖連は怒りはしないものの皮肉った。
「聖連さま、何卒吾にもご指示を賜りたく」
「先ずはその傷直すことだ。事はそれからだ」
「はい…」
青い炎が燃え上がる如く、日影の中に憎悪の炎もまたメラメラと静かに燃え上がった。
その天狼星は___。
「やっぱり来た…」
見回りに出ていた焔が、数人の黒い影を見つけて呟いた。
手綱を引き、焔と拓海は王都へ騎首を戻した。
その王都・王城で、狼靖は一人の男と再会する事になったのだ。
「…狼靖どの…か?玄武の…?」
「やはり、央軌どのか…」
「あんたの知り合いか?狼靖」
「はい。覇王陛下の側で共に剣を振るっていた央軌どのです。もう十年以上も前の」
「狼靖どの、何故貴殿がここに…?それにその方は…」
央軌の顔は、狼靖以上に驚いていた。
「セイちゃんっ!!」
駆け込んできた焔に、一同の視線が運ばれる。
「焔、その名で呼ぶなと云ったろう!」
「それどころじゃないよ。来たよ、黒抄だ」
「…ほらみろ、厄介事発生だ」
「清雅さま」
龍王剣を手に、出て行こうとする清雅を狼靖が呼び止めた。
「ここは、あんたに任せる」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍