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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 紅華国王城___紅王・凌姫は唖然とした顔で口に運ぶ茶器をそのまま止めていた。
 「お父さま縁の方と云ったかしら…?」
 「覇王陛下、いえ蒼龍王さまが覇王となられる前に側におりました」
 「そ、それでなの」
 古く色あせたマントに擦り切れた衣服、よく似た姿の男を彼女は知っている。
 父ではなく、末弟・清雅だ。
 「共に戦いました、央軌と申します」
 「で、ご用件は?何故私の所に?」
 「これを」
 男が出したものに、凌姫の手がまた止まる。
 白銀一色の剣が一振り。
 「それは…?」
 「天狼星と申します。前覇王陛下が、これを吾に託されました」
 「“眠れたるもの貫かん”?」
 刀身には、そう文字が刻まれていた。
 「吾にも、その意味は理解りません。ただ、前覇王陛下はこれを狙うものが必ず現れると申しておりました」
 「___その通りになったわけね」
 「はい。白い甲冑を纏った男が突然、吾の住む村に」
 凌姫は、それが誰か直ぐに理解った。
 白碧の人間だと。
 蒼剣以外にもう一本、父・覇王が剣を持っていた事も驚きだが、覇王争いに重要な一振りであることは白碧の動きで読める。
 「問題は…」
 凌姫は、髪を掻き上げながら嫌そうに眉を寄せる。
 国境に、黒抄の精鋭がうろついていると報せが来てから数時間経つ。
 未だ攻めてこないと云うことは、天狼星の存在が知られていない事だろうか。
 「また例の手を使うしかないようね」
 「紅王さま…?」
 「うちにはね、とっておきの秘策があるのよ」
 凌姫は、軽くウィンクして赤い髪を翻した。