覇王伝__蒼剣の舞い2
四国統一前、突然前覇王の前に出現し覇道を開いた伝説の剣“蒼剣”。
七年経ち、蒼剣は清雅の前に現れ再び輝く。
あれから、本当に面倒な事ばかり起きる。
自由人だった彼が、いきなり覇王争いに巻き込まれる事になるのだから。
だが蒼剣は、未だ本当の力を出していないと狼靖は云う。
その力を引き出せるのは、覇王だけだと。
故に、普通の人間には蒼剣は反応しない。逆に蒼剣の意思と反する者が触れても同じ、もしくは反発する。
瑠邑こと日影を弾き飛ばしたように。
蒼剣は清雅の手にあっても、光ることはなかった。
それは彼が、蒼剣を完全に目覚めさせてはいない事を意味していた。
清雅は蒼剣に選ばれたが、資格者であって覇王ではない、黒王も白王もそう思っているからこそ、清雅の命を狙う。
「何も起きません…ね」
拓海が、気まずい雰囲気を察する。
「…っ」
「清雅さま?」
清雅が呻いた。蒼剣がすうっと一筋の光を放つのと同時に。
“____心臓を射抜かん”
誰の?
蒼剣はそれ以上語ることはなかった。
「清雅さまっ!?」
胸を押さえ跪く清雅に、蒼剣はまた沈黙を始める。
「理解ったぜ…」
「え…」
「心臓を射抜け、だ」
「そんな…」
あの言葉の意味を、そこにいる誰もが同じ推論にたどり着く。
欠けていた言葉も。
『天より下りし神龍、ここに記す。覇王たる心臓に秘めたり』
それは即ち、
「清雅さまの…心臓…?」
それは今までなく残酷で、信じがたい事だった。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍