覇王伝__蒼剣の舞い2
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___どうして…。
拓海たちの衝撃は、当然かも知れない。
蒼国宰相として七年仕えてきた瑠邑が、“泥棒”だったのだ。
いや、正しくは間者。
仮面は外れ、銀髪は一瞬のうちに金色に変わり右半面を覆う。
「まさか、七年も俺の側にいたとはな。日影」
「ふ、聖連さまの為だ。あの方を覇王にするために吾は動く。どうして吾だと理解った!?」
「お前だとは理解っちゃいねぇよ。ただ、この城ン中に間者が紛れ込んでいるのは前から理解ってた。しかも、七年前からやたらと俺の動きが黒抄に読まれて命を狙われる。そういえば、奴らが何処に現れたかお前がいつも一番先に俺に教えたよな。同時に黒抄にも教えてた。俺はてっきり間者は黒抄の人間だと思ってた。お前たちの計画では、本当なら俺は黒抄の刺客に殺されて、その間に蒼剣を手に入れる。違うか?」
「ふふ、その通りだ…。ところが黒抄のやつらは手こずった。お陰で七年も経った。だから…」
「お前が動いた、ってか?」
「最初から…、お前をこの手で殺しておくべきだった。最も側にいたこの吾が…っ」
日影は、悔しさを滲ませ立ち上がった。
「清雅さまっ」
「吾は諦めぬ…、蒼剣は必ず手に入れる」
またしても蒼い光に阻まれた日影は、すっと空間に溶けた。
「一合戦できなかったですね、清雅さま」
「掃除はできたぜ」
「っていうか、逃げられちゃったよ」
「でも、何故彼が間者だと?」
「瑠邑は、ここに蒼剣の封印がしてあるのを知ってる。迂闊に手をだせばどうなるかもな」
「あ…」
「タクちゃん?」
拓海は、ここで瑠邑とすれ違ったのを思い出した。
「あの時、やつは手にかすり傷を負ってた。それはここに触れた事を意味する」
「それなのに危険を冒してまで?」
「俺が封印は壊れたと云ったからな。間者ならもう一度ここを開けようとすると思ったのさ」
実際、その通りになった。
清雅の嘘に気づかず、瑠邑は封印の扉に手を掛けた。
術の変異が解かれ、日影に戻ってしまった彼はもうここにはいられない。
「さてと、久しぶりに対面といくか」
清雅は扉の前に立ち、手を掛けた。
重い扉の開く音。
その先に、黄金に彩られたそれはあった。
黄金の鞘に黄金の龍、中央に填め込まれた蒼い貴石。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍