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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 荒涼とした、赤茶けた大地。
 蒼国と紅華国の間にある、無国籍地帯に広がる通称“赤の谷”。
 三百年前、龍が天から降りたと云われる大地はその衝撃で裂け谷となり、先住民が遺跡を建てた。
 その遺跡は、もう誰もいない。
 「静かですね」
 「ええ、あの後白い男たちも来なくなりました」
 遺跡の護り人の子孫だと云う少年ハオンと、彼らはもう一度赤の谷に降りた。
 「生き埋めになりたくない」
 珍しく弱気な焔が、呟いた。
 「だったら来なくていいんだぜ」
 「…理解ったよ。もう、数日会わない間に意地悪になったね、セイちゃん」
 焔のぼやきに、拓海は思わず吹いた。
 前を見えば、広い背中がある。
 大丈夫___。
 いつも勇気と自信、安心を与えてくれる清雅の背中。
 遺跡は、辛うじてその姿を保っているといった感じだ。
 清雅救出の時に、拓海の玄武の能力は制御出来ずに遺跡の中で暴発した。お陰で中は、今にも崩れかねない危うさがある。
 しかも、今度は四獣聖全員揃っていた。
 精神状態で変化する四本の剣が、この中で発動したらどうなるか。
 「やはり、何もありませんね…」
 「僕も父から詳しく聞かされてなくて…」
 申し訳なさそうに頭を掻くハオンを、拓海は宥めた。
 『___遺跡に行く』
 そう清雅から彼らが聞いたのは、彼らが赤の谷から蒼国に帰って間もなくの事だ。
 ___何もないんじゃなくて、あるんだ。ここには。
 遺産と聞けば大抵はそのものを想像する。ガランとした遺跡内部、石壁と煉瓦の入り組んだ通路、遺産の影も形も見えないその空間。
 白い影たちには、ここは無駄と映ったのだろう。故に、蒼剣を使って探そうとした。
 ここが破壊される事になるとは計算に入れずに。
 そうならなかったのは、ある意味よかったかも知れない。四獣聖の力でさえ壊れるこの遺跡が蒼剣が目覚めれば、遺産は埋もれてしまうのだから。
 拓海は、視線を清雅に向けた。
 あの時、暴発した玄武の力を制御したのは彼だと。
 でなければ、本当に生き埋めとなり、遺跡は永遠に埋もれる。
 「あれだ」
 清雅は、すっと指を指す。
 天へ駆け上がる龍の壁画を。

 壁画を見たそれぞれの反応は、同じだった。
 驚きもせず、まるでそこにあるのが当然という顔だった。