覇王伝__蒼剣の舞い2
「よし!」
蒼国王城外、拓海は地面にしゃがみ手を当てた。
それを見守る四獣聖たち。
「……」
数分後。
「……」
更に数分。
「……」
得に変わった事は、起こらない。
「あれ…?おかしいな…ははは…」
赤の谷では、玄武の能力を解放した筈なのに。
「ま、調子悪い時もあるって」
焔が拓海の肩に腕を回して慰める。だが、拓海の興味は少し離れた所に向いていた。
大きな木の下、星宿と共にいる清雅。
こちらに関心がないのか、腕を組んで目を閉じたままだ。
思えば、赤の谷から帰ってから彼とは会話をしていない。あの壁画を見た時から。
「あれから、赤の谷から白い影は完全に消えたそうですよ」
側にいた星宿が、徐に切り出す。
「目当ての物がなかったんだろうさ」
「“遺産”ですか」
「…」
「でも、エリアXの住人たちは遺産を護ってきた子孫だそうですよ。本当に何もなかったんでしょうか?」
「中は崩れてもう入れないんだ。確かめようがねぇよ」
「そうですね」
星宿が、軽く笑む。何かを察したような顔で。
四獣聖NO2と云われる星宿である。勘の鋭さは清雅も驚くほどだ。
「星宿」
いつもは“白虎”と四獣聖名で呼ぶ清雅が、そう呼んだ。
そういう時は決まって、重要な話なのを星宿は知っている。
「何か?」
「お前に、未だ俺の秘密云ってなかったな」
清雅はそういって、厳しい表情で口を開いたのだった。
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍