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覇王伝__蒼剣の舞い2

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 笑顔を引きつらせながら、拓海は頭を掻いた。
 ある意味、清雅を助けたことになるのだろう。
 星宿や狼靖、焔たちも駆けつけたが遺跡が崩れ始めた為に白い影は自ら撤退した形になった。思う存分暴れてやろうと意気込んでいた焔には、それが面白くなかったようだ。
 「清雅さまの選択は正しいですよ」
 「尚武さま?」
 紅茶を煎れながら、尚武がにっこりと微笑む。
 「拓海さまは、やはり玄武だと」
 「だよね」
 「僕なんてまだまだですって…」
 「拓海、自信を持つことだ」
 「星宿さままで」
 二人同時に期待の眼差しを向けてこられ、拓海は思わず椅子から落ちそうになった。
 思えばどうやって、あの遺跡から脱出できたのか覚えていない。
 ただ、遺跡で見たあの壁画だけは鮮明に記憶している。
 帰ってから、清雅は室から出てこない。
 狼靖と共に、何かを話しているのだと察して尚武も星宿も焔も敢えて扉の中にいる二人人に触れない。
 ____ドラゴンの遺産の事を話しているんだ。
 拓海は、そう思った。
 少なくとも、清雅はあの壁画の前で何かを思っていた事は確かだ。
 そしてその遺産に、蒼剣が深く関わる事を。
 
 「___未だ、何か隠してるだろう?」
 狼靖を見るなり、清雅は厳しい表情を向けてきた。
 「遺産の事ですか?」
 「そうだ。覇王に一番近いのは狼靖、あんただ。覇王は、実子の黒狼や聖連よりも信頼してた。以前凌姫がそういってたぜ。その覇王がドラゴンの遺産について何も云わない訳がないっていうのは聖連の見解だが、俺が聞きたいのは別の事だ」
 「清雅さま、吾は覇王陛下からは詳しくは聞いておりません。この四国にはドラゴンが眠っている、そう聞いたのみです」
 狼靖は、嘘は云っていない。
 事実、彼は前覇王からはその言葉しか聞かされなかった。
 『蒼剣が、それを教えてくれる』
 覇王の死後、狼靖は凌姫から蒼剣を託され、北の大地で暮らしていた。妹の死もあって、彼は玄武を退き元の一平民に戻るつもりで。
 その北の大地を追われるように、彼は蒼国にやってくるのだ。
 未だ前覇王が蒼龍王と呼ばれ、一領主だった地に。
 そして、死んだと思っていた妹の子、清雅と八年ぶりに再会するのだ。
 蒼剣が、輝いたのはまさにその時だ。
 『蒼剣が教えてくれる』
 まさに、前覇王の云うとおりに。