覇王伝__蒼剣の舞い2
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遺跡近くで、星宿たちは機を窺っていた。
「何か、慌ただしくない?」
焔の云う通り、遺跡の周囲にいた白い影たちの動きが慌ただしい。
「どうやら、拓海は清雅さまを助け出しましたね。玄武さま」
星宿の声に、狼靖も確信する。
そして、息子・拓海の変化も。
清雅と拓海は、遺跡の中を疾走していた。
来た道は白い影に阻まれ、清雅も拓海もまともにやり合える力はなかった。
更に、遺跡の天井がポロポロと崩れ落ちてくる。
「いったい何が…」
「お前の未熟な能力の所為だ。制御の仕方覚えた方がいいぜ」
助けさせておいて、酷い云われようである。
だが、それは事実だ。
____本当に生き埋めになるんじゃぁ…。
白い影たちの剣を払い、彼らが向かっているのは更に奥。
そして___。
「清雅さま、行き止まりです」
「ちっ…」
清雅が舌打ちをした。
その壁には、大きな壁画。
「…これ龍ですよね?」
長い巨体をくねらせ、爪と牙を天へむける龍。
だが、それを見つめる清雅の顔は拓海が初めて見るものだ。
「清雅さま…?」
「拓海、横を見ろ」
「横?」
『天より下りし神龍、ここに記す。覇王たる…に秘めたり』
「天より下りし神龍…って確か…」
それは赤の谷が昔“龍が降り立つ地”と云われていた事だ。その後この遺跡が建てられ、遺産を護る一族が暮らしていたと。
「遺産の在処を示してるんだよ、こいつは」
「ええっ!?」
「どうやら、未だ奴らはこいつに気付かなかったようだな。ま、肝心な箇所が崩れてりゃな」
故に、『覇王たる…に秘めたり』なのだ。
だが、拓海には気がかりなものが出来た。
清雅が、一瞬見せた今までにない厳しい表情。
あれは何だったのか。
「いたぞ!」
白い影たちが、突進してくる。
ドンっ!!___。
蒼い閃光が壁画の間を包んだ。
紅茶のいい匂いが、室に籠もる。
尚武とっておきの、アールグレイティー。
「____結局」
焔が、頬杖をつきながらむくれている。
「活躍したのは、タクちゃんじゃん」
「僕、たいしたことしてないですよ。焔さま」
「謙遜しちゃって。セイちゃんを助けたのはタクちゃんなのは間違いないよ」
「でも、遺跡壊しちゃいましたし…」
作品名:覇王伝__蒼剣の舞い2 作家名:斑鳩青藍