小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ふれる手…ダレ?

INDEX|3ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 


 丸まっていたそれは、体を広げ、うじゃうじゃの足をばたつかせると、くるりと戻ってぱぱの掌を歩き始めた。
「これは、ダンゴ虫。噛まないから大丈夫だぞ。ちょっと こそばゆいけどな」
僕は、ぱぱの手を持ってその虫を落とした。
「あーあ。じゃあ違うの見つけるか」
僕は、ぱぱの背中を追いかけ ついていった。
「お、バッタがいるぞ」
ぱぱは、草を分け捕まえようとしている。僕は、ぱぱのシャツの端を捕まえて やめようよとばかりに引っ張った。
「待て待て、今捕まえてやるからな。あ、飛んでった」
その細い黄緑色の体のバッタは、翅を出してチリチリっと飛んで 何処かの草の中に紛れ込んだ。正直、僕はほっとした。
「残念。あれは ショウリョウバッタ。掴むとな 茶色の液を吐くんだ。実はそんなに好きじゃないけどな」
へえ、ぱぱも 嫌いなものあるんだ。何だか 少しぱぱに近づけた気がして嬉しかった。

僕の麦わら帽子の前を何かが横切った。僕は気にもかけず、ぱぱと過ごすのが楽しくて公園を走り回っていた。
陽射しが暑くなってきた。ぱぱと僕は公園のベンチに腰掛け、ままが持たせてくれた水筒のお茶を飲んだ。冷たくて、もっともっと遊べる気分だった。
「こいつも 休憩かな。圭の帽子にくっついてるヤツがいるぞ」
僕は、見ようと顔を上げたが、見えるわけはなかった。
ぱぱは、僕の麦わら帽子の顎紐を緩めると、そっと帽子を脱がし見せてくれた。
帽子の上には 緑がかった青く艶々した体の虫がくっついていた。体の横から はみ出した薄翅を見て ぱぱは、とまったばかりだと教えてくれた。 
ぱぱは、昆虫博士なのかなぁ。とにかく僕の知らないことを たくさん知っている。
そんなぱぱは、すごい。大好きだ。でも今は、ちょっと好きじゃなかった。 
作品名:ふれる手…ダレ? 作家名:甜茶