ふれる手…ダレ?
外に出かけたぱぱと僕は、お日様が昇るのを見ながら 公園へと向かった。
いつもの公園が見えてきた。ぱぱの大きな手が、僕の手をぎゅっと握った。
ぱぱを見上げる僕は、麦わら帽子のつばで遮られていたお日様の光を目に眩しく感じた。
しばらく、ぱぱの顔が、黒くしか見られなかった。でもぱぱが、笑っているのがわかった。
ぱぱは、その公園にははいらずに通り過ぎた。
やったぁ、今日は大きい公園にいくんだね。大通りを渡るから ぱぱが僕の手を握っていたことをわかるようになったのは、それからずいぶん後のことだった。
思った通り、大きな公園にやってきた。
遊具もあるけれど、芝生や大きな木、綺麗な花の咲いているところ、雑草のようなただ草がぼうぼうと生えているところがある公園だ。
「ほら とんぼが飛んでいるぞ」
ぱぱのいう先を見つけるのは、少し大変だ。だって僕とずいぶん背の高さが違うのだから、僕はさんざん周りをきょろきょろして見つける。
とんぼなら、まだホバリングして飛んで待っていてくれるから見つけられた。
見つけられないこともある。その時僕は、だらんと手を下げ、空を見上げてどうしたらいいか わからなくなる。
「圭、手を出してごらん」
ぱぱが言う。僕が広げた手の上に ぱぱは 黒いまん丸のマメを置いた。
掌の中でコロコロと転がるから、僕は落とさないようにじっと見つめていた。
そのマメが、広がった。うじゃうじゃと動いたから、僕は驚いて捨てた。
「ははは、圭どうした? ダンゴ虫怖いか?」
怖いも何も 僕は初めて手に乗せたそれが どんな動きをするのかも知らないのだから、とにかく驚いたんだ。
ぱぱは、それをまた拾うと、僕の掌に乗せようとする。僕は、後ろに手を隠し、嫌だと
ぱぱに言った。
ぱぱは、僕を膝の間に挟むようにしゃがむと それを大きな掌の上に置いて見せてくれた。僕の背中の後ろには、安心できるぱぱの胸がある。僕は埋もれるように背中を凭れて見ていた。