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海野ごはん
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novelistID. 29750
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裸族の女

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次の日、修平は午後8時に仕事が終わった。いつものコンビニは会社帰りの同じようなサラリーマンで多かった。駐車場も満杯だった。ベッキーの部屋が気になりマンションの3階を見上げたが、まだ仕事なんだろうか、ひっそり暗く灯りは見えなかった。
修平はベッキーの裸を思い出し「やっぱり、あん時やっとけばよかった」と少し後悔した。そして冷房が効いた店内に入りハンバーグ弁当を買った。まあ、どれでもよかったわけだが、とりあえずって感じで洋食にした。
「ああ、手作りの料理が食べてえ・・・」

しばらく後、会社はもうすぐ盆休みだというので仕事は深夜まで及んでいた。4日間の盆休みの為にサービス残業するのなら、どうせ暇だし会社に出てきて出勤日数を増やしたほうが得だのにと、修平は不満を飲み込み働いていた。会社を出たのは午前1時をまわっていた。
修平はベッキーのマンションがある、コンビニに車を止めた。他にも近くにコンビニがあるのだが「もしかして」と、エロい下心がそこを選んだ。
深夜遅くもあり、駐車場には他の車がなかった。ベッキーの部屋は明かりがまだ点いていた。この前と同じく窓も開いている。修平は「いるのかな?」と思い、ベッキーのマンションに近寄ってみた。
「修平?ねえ、修平じゃない」ベッキーの声がした。
「おぉ!」こっそり行ったつもりが見つかってしまったので、下心まで見つけられたようで修平は少し照れた。
「また、お弁当買いに来たの?」
「ああ」修平は上を向いて返事をした。ベッキーはまた裸だった。
「なんだ、今日もまた裸なのか・・・危ないぞ」
「へへっ、裸族だもん。上がっておいでよ。ご飯作ってあげるよ」
「いいのか?今日はやっちまうぞ」
「馬鹿!いいよ!」
修平はコンビニの駐車場のフェンスを乗り越え、隣の敷地をまたぎ、ベッキーのいる3階へと急ぎ足で駆け寄った。なんだかうきうきしていた。

Tシャツを着たベッキーがドアを開けて待っていてくれた。
「おかえり~」
「お帰りじゃないよ、俺んちじゃないんだから」
そう言いながらも少し修平は嬉しかった。
「今日はちゃんと着てくれたのか」
そう言いながら修平はベッキーのTシャツを指差した。
「へへっ、Tシャツだけ。パンツは履いてないよ」そう言うと、Tシャツの裾をめくり生い茂った黒々としたものを見せた。修平の心臓がドクンと大きく鼓動を打った。
2回目の訪問は修平にとって、少しスリルがあった。それは彼女が裸族ということ。性癖で男を誘うこと。美容師で25歳であるということがわかっていたからだ。何にも知らない女とすぐやりたいほど飢えちゃいない。しかし今夜はいくらか知り合いだ。ひょっとして、いい雰囲気になり、そうなるかもしれない・・・いや、そうだったらおもしろいのにと考えていたのだ。

「冷蔵庫の残り物でいい?すぐできるから」
「ああ、なんでもいいよ。手作りの方がコンビニより100倍おいしい」
「うれしい。そう言って食べてくれる男はあんたが初めてだよ」
修平はベッキーの部屋を見回した。なんだか、少し埃っぽいが綺麗に片付けてある。
「あれっ、これって1年前のカレンダーじゃん」曜日がおかしいのに修平は気がついた。
「えっ、そうだった。忙しいからそのままにしてたかな」キッチンからベッキーの声が聞こえた。
「ほんと、何も気にしないんだな、おまえって。変な奴」
修平はテーブルに並べられたベッキーの手料理をおいしく食べた。そして前回のようにメンソールのタバコを取り出すと一息ついた。
「この前、寄ってみたんだけどいなかったね。帰りは遅いの」
「あらそう・・・たまたまじゃない。いつもいるよ」
「誰か、男捕まえたか?ほら餌食になった奴はいたか?」
「ふふん・・・いないよ」ベッキーは笑った。
「俺みたいに優しい奴はいないだろ。裸の女をほったらかして説教して帰っていく奴」
「それって優しいの?冷たいんじゃない・・でも修平はいい人ね」
「まっ、常識あるからな」
「目の色変えてやりたがる男って最低ね。まっ私もおんなじだけど」
そう言うとベッキーは修平が吸っていたタバコをつまみあげると「頂戴ね」と言って一口大きく煙を吸った。
指先のタバコからは白くたなびく煙が細く外に向かって流れる。ゆらゆらと不規則な流れを作り、部屋の中を漂うように宙に浮いている。
修平はベッキーがどんな風に今まで、ここで過ごしてきたのだろうと興味を持った。男達とはどんな風に戯れたのだろう。どんな男が誘われこの部屋に来たのだろう。。。そんな小さなゲスな疑問が心に浮かんだが言わないことにした。
修平も黙り、ベッキーも黙り、少し沈黙が流れた。

「うまかったよ。ありがと。また来るわ」修平はやりたかった助平心を抑え付けて立ち上がることにした。
「あら、したくて上がってきたんじゃないの?」
「そう見透かすなよ。あたりだけど今日は帰るわ」
「今日も帰るでしょ・・・私って魅力ない?」
「いんや、かわいいし、プロポーションもよくて、どっちかというとやりてえ」
「インポ男なん?」
「ふっ・・笑わすなよ。びんびん男だ。気分が乗らないだけだ」
ベッキーは修平の顔をまじまじ見た。そして小さく笑った。
「そんな男もいるんやね。男ってみんな飢えた狼かと思ってた。今までそんな男しか知らなかった私って可哀想くない?」
修平もベッキーの顔を見た。どこか陰のある顔が気になるが、そんじょそこらの女性よりいい顔だ。
「悪かったな。ベッキーがいい女だから、二人でいい恋人気分になってそうなりたいんだ。たとえば好きだとか言ってさ・・・その方があれも楽しいだろ?」
「修平いい男なんやね。早く知り合えばよかった」
「今知りあってんじゃん。遅くないよ」
「・・・・・・」
「泣くなよ、それよりほら、その性癖治せよ。誰かれやられたんじゃ俺も嫌だからさ。裸族はいいけど」修平は笑いながら言った。
「修平・・・知り合えてよかった。また来てね」
「おう!」
修平は玄関に脱いだ靴を履きなおすと、咥えタバコのまま外に出ようとした。その時ベッキーが近寄ってきた。そして咥えたタバコをつまみあげ修平から取り上げると、爪先立ちで修平の唇にベッキーはキスをしてきた。
「おっ・・・・」修平はベッキーの冷たい唇に心臓が高鳴った。
瞬間的に修平は身を引いたが、ベッキーの唇の感触が心まで残った。
照れくささを隠して修平は「やっばぁ~好きになりそうじゃん」と言った。
そしてタバコを取り上げると、咥えタバコでベッキーの玄関を後にした。
フェンスを乗り越え、コンビニの駐車場に止めておいた自分の車に戻った。フロントガラスからベッキーの部屋を見ると手を振っていた。修平も手を振った。「またなっ!」聞こえたかどうか知らないが修平は声に出して言った。深夜の暗い駐車場を抜ける。幹線道路の流れに乗る。音楽のスイッチを入れる。流れてくる曲が心に染み渡った。ベッキーのキスを修平は思い出し片唇を浮かせハンドルを切り自宅へ向かった。

作品名:裸族の女 作家名:海野ごはん