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海野ごはん
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novelistID. 29750
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裸族の女

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翌日、仕事帰りにいつものコンビニに車を止めたが、ベッキーの部屋は電気の明かりが見えなかった。翌日も翌日も。少し気になったが仕事なんだろうかと思い、会いたい気持ちを我慢した。
3日後の深夜、またコンビニの駐車場に車を止めた。ベッキーの部屋の電気はまた点いてなかった。エンジンを切り、店内から買ってきた弁当をベッキーの部屋を見ながら修平は味気なく食べた。
「あっ・・」誰か、暗闇で動いたような気がした。ベッキーの部屋に誰かいる。修平は弁当をサイドシートに置き、暗いベッキーの3階の部屋を凝視した。
誰かいたはずだ・・・修平はもしかしてベッキーがこの間自分を誘ったように、誰かを誘い込み電気を消して、今やってるんではなかろうかと嫉妬した。きっと、そうかもしれない・・・。心臓が早鐘のように鳴った。
妄想はベッキーの笑顔を苦痛に歪め、今まさに犯され、覆いかぶさる男は知らない男、いや、やろうと下心を丸出しにした自分かもしれない・・・。修平はそう考えると嫉妬心に火が点いた。車のドアを開け、フェンスを乗り越え、階段を駆け上がった。そして304号室の鉄の扉をがんがん叩いた。
「ベッキー開けろ!俺だ、修平だ。いるんだろ。あけろっ!」
返事も構わず修平はどんどん叩き続けた。ドンッ!ドンッ!・・・

隣の303号室のドアが開いたのはその時だった。

「おたく、なにやってんの?もう深夜だよ」
「すいません・・・」それでも修平はドアを叩く。
隣人の男は頭をかきながら、しょうがないなという姿で自分ちのドアを少し大きく開けた。そして
「あのさ、そこ空家なんだけど・・・おたく酔っ払ってんの?」
えっ・・・修平はドアの上の番号を見た。304号室だった。間違いない。構わずドアをさらに叩く。
「あんた、警察呼ぶよ!空き家って言ってるだろ!」怒鳴る男の声がした。
「そんなこたない!この前ここに来たんだ」修平は血走るように言った。
男はふぅ~と息をして
「そこのお姉さん、1年前に殺されたんだよ。わかる?死んじゃったの。もうずっと空き家だよ。俺も気味悪いから出て行きたいんだけど、金がないからいるんだよ!」捨て台詞のような言葉で怒鳴った男はドアを強く引いて締めた。ガシャン!!物凄い音がした。
暗い廊下の蛍光灯は頼りなく、ちらちらしてる。あたりが急に暗くなった気がした。修平は鍵がかかったドアを何回か、ガチャガチャと捻ってみた。
しんとしていた。ベッキーの顔が思い浮かんだ。1年前のカレンダーを思い出した。冷たい唇を思い出した。陰のある顔を思い出した。
はっ・・・はっ・・・はっ・・・妄想だったのか・・・幽霊だったのか。
修平はドアに触れると膝からその場に崩れ落ちた。


                                (完)
作品名:裸族の女 作家名:海野ごはん