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海野ごはん
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novelistID. 29750
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裸族の女

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修平はベッキーの部屋を眺めながら、自分の弁当をもくもく食べた。
「それおいしい?」ベッキーが聞いて来た。
「別に。おいしくもなけりゃまずくもない」
「私が弁当食べるから、あんた、これ食べなよ」
「いいのか。じゃ、これあげるわ」そう言うと修平はベッキーが作った料理の皿を引き寄せ、自分の弁当をベッキーの前に置いた。
「俺、修平。32歳。しがないサラリーマンだ」
「ふ~~ん、家は近いの?」
「車で10分かな」
修平は残さず食べ終えると、コンビニの袋の中からメンソールのタバコを取り出し「ライターある?」と聞いた。ベッキーは立ち上りテレビの横に置いといた灰皿とライターを手渡した。
ふぅ~、タバコの煙を天井に吐き出すと修平は喋り始めた。
「あ~うまかった。やっぱりコンビニよりいいな」
ベッキーがにこりとする。
「本題に入ろうか・・・いつも裸で男を誘ってんのか?」
「いつもじゃないよ。したい時だけ・・・」
ベッキーは缶ビールを飲みながら悪びれず言った。
「何人ぐらいそうやって誘ったんだ」
「4人ぐらいかな」
「じゃ俺は5番目の餌食なのか」
「ふふっ、やればね」ベッキーはいたずらっぽく笑った。
「怖くないのか?」
「選んでるもん」
「どんなふうに?」
「人がよさそうな男・・・」
「俺は人がよさそうに見えたのか?」
「うん」
修平は会社で低頭にしてサービス残業の仕事までこなす自分を考えた。それに今まで人を騙したことはないし、ましてや女を捨てたこともない。どこから見ても平凡でつまらない人間だし人がよさそうってのは当たってるじゃないか・・と、またもう一人の修平がほくそ笑んで言っている。
「正解だ。俺は平凡な人間で悪人じゃない」
「修平・・・修平は裸の女見ても感じないの?やりたくないの?」
「そんなことはない。やりたいさ。正直エッチは好きだし」
「・・・・彼女いるの?」
「いない」
「私とエッチしたくない?」
「そりゃしたいと思ったけどおかしいだろ、いきなり見ず知らずで抱きあったら。本音は今すぐしたいんだけどさ。ほら、お前の裸の残像で立ってる」
「どこが?」
「あそこが」
「したい?」
「いや、やめとく。さっき説教したばっかりだし、今したら俺も変態の餌食だ」
「立ってんでしょ」
「ああ、びんびんね」
「あたしね。変態かもしんない。誰かに裸を見せつけて興奮して燃え上がるの。すごくしたいときに抑えが効かないの。でも時々だよ。時々男を受け入れたいって思うの。その時は別人みたいになるみたい」
「今日のように、ベランダから誘うのか」
「ううん、今日のは初めてのパターン」
修平はベッキーが他にどんなパターンで男を誘うのだろうかと想像したが、思いつかなかった。
「今日みたいに部屋から誘うのは危ないんじゃないか。部屋ばれるし、つきまとわられたりしないのか?」
「ううん、みんな私のことド変態みたいに思って気味悪がってる」
「ふ~ん、それでもいいのか。俺にはよくわかんねえ。俺だって、やりたい時はすごくやりたいと思うけど、そこまでできないな」
「私は変態なのよ。それでもいいの」
「ふ~ん、そんなもんか。でも危ないよな」
「だから、選んでるって」
ベッキーは笑いながら、修平のタバコをつまみあげると一口吸った。白い煙が部屋の中で漂い、やがて消えた。
変な女だ・・・だけど悪くはない。それにいいおっぱいしてるし・・・修平はやりたいけど、こんなんでやったら、やっぱりまずいよな・・・と起き上がった下半身をなだめるように、やること以外の話題を口にすることにした。
「仕事は?」
「美容師」
それ以上話題は続かなかった。尋問じゃあるまいし、知ったところで、別に彼女との関係がまた続くわけじゃないし・・・。

「俺、帰るわ。晩飯うまかったし」
「えっ、帰るの?やんないの?」
「したいけど、やめとくわ。また今度な」
「・・・・・・」
「また、誘ってくれ。晩飯もセックスも」
「・・・・・」

修平は玄関に脱ぎ捨てた靴を履くと、「じゃ~な」とあっさりベッキーの部屋のドアを締めた。そして来た時と同じようにフェンスを乗り越え、コンビニの駐車場に飛び降りた。
「修平!」ベッキーの呼ぶ声がした。後ろを振り返り見上げるとベランダから身を乗り出したベッキーがいた。今度は服を着ていた。
「また、遊びに来てね」
「ああ!」修平は大きな声で言った。
「次はさせてくれ!」
「うん、いいわよ!」
二人でその会話に笑った。
車を始動させ、窓ガラスを開けると修平はベッキーに手を振った。

作品名:裸族の女 作家名:海野ごはん