小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ORIGIN180E ハルカイリ島 中央刑務所編 11

INDEX|5ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

レ「続き───5049IJNG…それを‥ハッ、ううっ」
 レイクは再び突っ伏して泣き声を上げた。
レ「ウ───ッ、ウ───ッ、やめろ、ユース!」
 ベンは肩を押さえられているにもかかわらず、突然ダンと音を立てて立ち上がった。そんな彼を逃がすまいと仲間の手が伸びたが、ベンはその場所で自分の頭を抱えたまま叫んだだけだった。
ベ「やめてくれ、ちくしょう!」
助「お前が興奮してどうする。ちゃんと待機してろ。‥坊主、さっさと言えよ。どうするんだ、次は。え?」
 アモーがベッドを回って走ってきて、レイクの顔のそばに身を屈めた。医者はレイクの背中をさすってやりながら声をかけた。
ア「レイク、ユースに何を送られてる?痛い物か、気持ち悪い物か、それとも他に何か精神的なものか」
助「刺激をコンピューターで送信されてるって事ですか。それじゃあ、もっと強い刺激を実際に与えましょう。それで知覚はハッキリするはずです」
助「スパイ映画やドラマでよくやってるよな。中々口を割らない奴の腕にナイフを刺すとか、脳に電流を通すとか…なあ?」
ア「君ら、病人を何だと思ってる」
レ「ロック…。ベン、ロックの仕方は?」
ベ「ロックしろったって、この機種じゃ。あっ、これか」
 再び攻撃を受けたために、レイクが高い悲鳴を上げて身を起こした。
 体を動かさないようにしようと、アモーが少年に抱きついて固定した。医者はそのまま少年の背中に腕を回すと、相手の震えまで止めようとするかのようにぎゅっと力を込めて抱き寄せた。
 うつ伏せ状態の少年の足が、そのせいでミットンのいる所からズルズルと前の方へ引っ張られていった。レイクは半身を起こした形で、今はアモーにがっちりと押さえ込まれていた。

 少年は医者の腕の中で体を発作のようにガクガクと動かしていた。
 隣でようやくベンが自己ロックを終えると、彼は一挙にその力を抜いた。胸を大きく上下させて目を閉じた彼は、しばらく口をきく事すら出来なかった。
 一方助手達は歓声を上げ、ベンの肩を揉んで同僚を口々に持ち上げた。
助「やったぞ、その調子だ」
助「やれば出来るじゃないか」
助「おや、何かメールが来てるぞ。向こうからの通信なんじゃないか?」
 一人の声に皆が画面を見ると、それは確かに敵からの通信文だった。

 ───無駄なことはやめろ。死にたいのか?

 それをミットンも覗き見て、助手にこう言った。
ミ「誰かコンピューター室と掛け合ってきてくれんか。ユースにこちらへ来てくれと言うんだ。じかに話をすれば、こんな無駄な争いはしなくて済む」
 助手が二、三人連れ立って走っていった。


 レイクがやっと目を開けて、脇のコンピューターを見ながら次の指示を出そうと口を開いた。
 少年の気力維持の為に、アモーは点滴の薬の量を少し上げさせた。そのあと医者はレイクが疲れないよう配慮して、自分の体に寄りかからせながらその様子を見た。
 すると少年は口をパクパクさせたまま、驚いたように目を見開いていた。
ア「どうした、レイク」
 彼は相手の上下するあごに手を掛け、口内を覗き込んだり喉に触れたりした。
ベ「しゃべれないよう命令したと言ってます。目と耳と声、それと両手両足に、機能をストップさせる指令を送ったって」
 画面にはさらにこんな文が続いていた。

 ───先生方、次は呼吸を止めますよ。反撃は無理です。

 助手やアモーはその画面を見て呆然とした。やはりコンピューターのプロ相手に戦うなど、始めから無理なのだ…という気配が、そこら中から起こった。

 しかしレイク本人はあきらめていなかった。
 少年はアモーの体に自分の頭を打ちつけてみせる事で、それを示した。医者は包帯が巻かれた上に器具のたくさんついたその部分をかばうように押さえたが、レイクは何度も頭を動かして相手に注意を向けさせた。
 彼はそうしておいてから、今度は体をゆっくりとコンピューターのある方へ向けていった。ほとんどベッドから身を乗り出すようにしてようやく頭が機械にゴツンと触れると、医者の静止が無くても止まってみせた。
 アモーは口を開けたままレイクを見ていた。
 少年は視力がきかないらしく目を虚ろな方向に向けたままだったが、相手の反応がないと知ると、また同じ事を始めようとした。
ア「君の頭とコンピューターをつなげるのか。頭って事は…タケルのチップの分割体に接続するのか。そしてどうするんだ?」
ミ「よせ、聞こえてもいない。レイクの脳波計の回線をコンピューターに繋いでみよう。同じ事だろ」

 技師がその通りにすると、レイクはたちまちの内に元に戻った。
 さらに彼は自分の脳だけの命令で、そこにある小型コンピューターを素早く動かし始めた。そしてあっという間に、医学部コンピューターとの間に二重の防壁を作り上げてしまった。
 成功に調子づいたレイクは、そのまま脳で機械を動かし始めようとした。
 しかしさすがにそこまでは体力がついていかなかった。
 すぐに脳波が落ち始め、別室に帰っていた技師が数値上の危険を知らせてよこした。それで医者らは慌てて少年を止めた。
ミ「レイク、それ以上はやめておけ」
ア「分かった、僕達が全力をあげて協力するから。…ベン、操作を頼むよ」
 ここにきて、他の助手達もレイクの意志に押された形になっていた。皆の顔が真剣に引き締まっていた。
 アモーはレイクの上半身をゆっくり下ろしていくと、一番疲れないような体勢で寝かせた。そうして彼は少年の頬を優しく撫でて笑いかけた。
ア「悪かったな。すぐにあきらめようとするのが大人の悪いくせだ。下手な分別が働いて、無理だと思っちゃうんだよな。反省するよ」