あいちゃん
次の日から練習が始まりました。
あいちゃんは劇の仲間に入って、うさぎの子どもの役をもらいました。練習は自分の教室です。
日本舞踊の練習はおとなりの教室です。劇の練習中、かすかに『さくらさくら』の音楽が聞こえてきます。すっかり振りを覚えているあいちゃんは、(ああ、ここでくるっと回るんだわ)とか、(ここは枝をふるのね)と思いました。
「あいちゃん」
先生の声がしました。
「あいちゃんのせりふよ。どうしたの?」
あいちゃんは音楽に気をとられて、うっかりしていたのです。あいちゃんは、自分の頭をこつんとたたきました。
家に帰ると、おねえちゃんがいいました。
「あい。あんた。日本ぶよう、おろされたんだって?」
あいちゃんはむっとして言い返します。
「ちがうもん。自分でやめたんだもん」
「そうよねえ、おかっぱじゃあねえ」
おねえちゃんのいじわるにあいちゃんは涙が出そうになりました。