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未花月はるかぜ
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After Tragedy5~キュオネの祈り(後編)~

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キュオネの祈り【後編】3


静かな暗闇にデメテルの寝息のみが聞こえていた。一番最初に彼女が寝入ってしまうのは、少し意外だった。

部屋の隅に僅かだけ残された蝋燭の火が揺らめいている。

「んん〜。」
キュオネは落ち着かないのか、さっきから、起き上がっては、パタンと寝転がる行為を繰り返している。

(誰よりも先に寝付きそうだと思っていたんだけどな…。)

僕は、キュオネには話し掛けずに、今日起きたことをずっと思い出していた。

久しぶりに訪れた神殿。そこまでの道筋。ハルジオンを優しく抱く、キュオネの姿。切ないような温かい様な気持ちになる。同時に、レーニスの兄弟と言われる男の事を思い出すと、何とも言えない、暗い気持ちになった。

「やっぱり無理かも…。」
そういうとキュオネは、立ち上がり、僕の元に来て、しゃがみ込んだ。

髪はすっかり元通りに戻り、自己主張の強い癖っ毛がイタズラに跳ねている。薄明かりの元、下から見るキュオネは、少し新鮮だ。
って。
「ちょっ、何してる!?」
僕は、慌てて布団から飛び起きる。キュオネは僕の布団の裾を握って、入り込もうとしていた。
「駄目だよ。デメテル、起きちゃうよ。」
慌ててキュオネは、僕の口を手で塞ぐ。動揺する僕のことを気にも止めず、布団に潜り込んだ。
「…。」