After Tragedy5~キュオネの祈り(後編)~
カストルは、愉快そうに笑った。その顔がレーニスに似ていて、まるで彼女に理解をして貰えなかったような錯覚を起こす。デメテルが彼に過度に怯える理由が分かったような気がした。これは相当神経に来る。僕は、奥歯をグッと噛みしめ、カストルを見た。
「僕が何でキュオネを憎まなくちゃいけないんですか?」
「単純な話だよ。レーニスとシー・ウインドスは、お前がいたのに、キュオネを誕生を望んだ。わざわざ苦労してさ。どう思う?つまり、そういう事だよ。」
「!?」
一瞬何を言われたのか分からなかった。
頭が理解するのを拒んだのかも知れない。心臓が急速に早く鳴るのを感じる。何故、レーニスは最後の1年間僕に1回も会わず、神殿に籠っていたのだろうか。僕は何も考えず、ただレーニスの帰りをシー兄ちゃんと一緒に待った。その間にシー兄ちゃんからレーニスについて何も聞かされていない。何で、キュオネの事を2人は隠していたのだろうか。2人にとって、僕は何だったのだろう…。
「まさか、考えた事も無かったのか…。めでたいやつだな。」
「…。」
カストルが厭らしい目で僕を見ると笑った。
「まあ、俺から見れば、お前はレーニスの息子だよ。キロ・ウインドス譲りの海沿い訛りのあの娘よりも、余程、神殿沿いの喋り方をしているお前の方が死んだ姉を思い出させてくれるよ。」
そう言うとカストルは、僕の肩を気軽にポンポンと叩いた。
「そんな考えなしだと利用されるぜ?デメテルは、ああ見えてかなりしたたかでズル賢い女だ。人を利用する事に長けてる。キロ・ウインドスなんて、いい例じゃないか。あんなに真剣にキュオネのお守りをしてさぁ…。あの女は、大事な事をお前に言ってない。お前には色々知る権利がある…。」
作品名:After Tragedy5~キュオネの祈り(後編)~ 作家名:未花月はるかぜ