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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy5~キュオネの祈り(後編)~

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「ユクスー!ただいまぁ!」
キュオネの明るくて元気な声がした。藍色の精霊服から黄色の人間の服装に切り替わったキュオネがぽんっと階段から現れた。着地に軽く失敗したのか、階段の下で若干よろめくと、スカートの裾を軽く調え、僕の姿を見付け、笑顔で走って来る。
「…!?」
キュオネは、カストルを見ると不思議そうに目を見開き、走る足取りを緩めた。
帰ろうとするカストルと帰ってきたキュオネが鉄格子の前ですれ違う。
「よっ!!悪いね、お邪魔したよ。」
カストルはキュオネを軽く見ると一言だけ添えて帰った。
「何を話していたの?」
キュオネは僕の腕を軽く掴むと大して慌てた様子もなく、明るく聞いてきた。慣れなれしく触ってくるキュオネに、僕は後ろめたい気分になる。
「んー。なんか、よく分からない。」
「何それ!」
クスクスと明るく笑うキュオネを見ていると、さっきの話は特に意味が無かったような気がして、僕は少しだけ、ほっとする。途端にキュオネに申し訳ない気持ちになった。
「ただいま。」
デメテルが胸に書類らしきものを持ち、トントントンと階段から降りてきた。
「どうだった?」
キュオネは、デメテルに詰め寄る。
「ユクスがキュオネの家に住むことに対して、正式な許可がおりたわ。」
書類をペラペラと振り、僕に見せ、デメテルは控えめに笑う。
「やったぁ!」
キュオネは、嬉しそうにぴょんぴょんと跳ね、デメテルに抱きつき、喜んだ。デメテルは、優しそうに微笑み、彼女の頭を撫でる。
その様子を見ているうちに、僕はさっきのカストルの薄気味悪い話が頭から抜けていく感じがした。さっきのカストルの発言は、大して意味が無いことなのかも知れない。彼は、話をする時にいちいち神経に触る言い回しをしていた。あれもそのうちの1つに違いない。僕は、一安心する。

こうして、久しぶりの僕の神殿行きは幕を下ろした。