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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
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After Tragedy5~キュオネの祈り(後編)~

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キュオネの祈り【後編】4


広い牢屋の中、僕とキュオネはデメテルを待っていた。デメテルは、昨日の結果を聞きに出掛けている。
「あっ、忘れ物をしちゃった!」
みつあみを編み終えたキュオネは、腰にパタパタと手を置くと、そわそわしだし、仔犬が自分の尻尾を追いかける様にクルクルと回った。 相変わらず、運動神経が鈍く、程なくするとバランスを崩し、足元がもたつく。
「ん?何か持ってきていたっけ?」
僕はげっそりとしながら聞いた。さっきまで、デメテルにキュオネと寝た事について、散々質問攻めに合い、どっと疲れている。
ちなみに、キュオネはと言うと、僕等の会話に付いていけず、『なんで、駄目なの?』『ユクスの身体、温かくて、気持ちよかったんだよ。』と問題発言をちょいちょい織り混ぜ、さしてお咎めなしで済んでしまい、元気である。
「うん!紫の布!腰に巻いていたやつ。多分、冥界で魔法を解いた時に置いてきちゃった!」
キュオネは、体制を整えると困った顔で僕を見る。紫の布は、レーニスから受け継がれた魔法の使えるアイテムだ。身体が弱かったレーニスが魔法を使うために補助に使用したもので、現在は人間に体質の近いキュオネが魔法を使うために持ち歩いている。
「魔法?」
キュオネの魔法と言えば、制御出来ない暴風の印象しかない。
「服。このままだと帰れない。」
キュオネは、藍色の精霊服を引っ張る。
「そういえば、いつの間に精霊服に着替えていたんだ?」
「着替えてないよ。いつも、魔法でこの服を人間の服に見せてるだけなの。」
「えっ、じゃあ、いつも精霊服着てたの?」
「うん。生まれてからずっと身に付けてるよ?」
キュオネは、レーニスが来ていた精霊服とほぼ同じデザインのスカートを引っ張った。僕は驚いた。確かに精霊は、生まれた時に既に精霊服を身に纏っていて、そこに魔力を保持して魔法を使うのだけれど、その体質をキュオネが引き継いでいたのは意外だった。僕が知る限り、キュオネの体質は全て人間寄りで、当然衣服においても人間の様に作られたものを着ているのだと思っていた。