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「なくなく友達も捨てていったって…。捕まったら、殺されるって分かっていても…。」
そう話すキュオネの顔は、寂しそうだ。
僕は、幼馴染みのトイやライに同じことは出来ない。でも、キロがいた世界は、そんな選択肢は無かったのだろう。そうしないと自分の身にまで危険が及んで、共倒れになってしまう。何せ、相手は神様だったのだから。 僕が来て間もない頃、感じていたキュオネに対するキロの過保護すぎる態度も何だか納得が出来た。現実の厳しさや命の脆さを知ってるが故に彼女はあんなにも真剣だったのだ。 キュオネは、小さく息を1回吐くと、ゆっくりと言った。
「だから、お母さん、シーさんを身籠った時、諦めて神殿に捕まりにいったらしいの。自分はどうなってもいいから、ブロウニーさんには前に進んで欲しいって、そう思ったらしいの。」
「知らなかった…。」
それは史実上削除されてしまった部分だった。僕はそんな文献を一切見た事がない。どんな想いで、キロは神殿に向かったのだろうか…。
「でも、それがきっかけでグループは崩壊してしまった。」
「…。」
「ブロウニーさんは、お母さんを助けようとして、仲間と仲間割れをし、神殿に捨て身で乗り込んだ。そして、捕まって、殺されてしまったの。」
そこでキュオネは、腕を伸ばした。キュオネの腕が蝋燭の光を遮り、少し視界が暗くなる。それから、キュオネは言葉を繋げた。
「だから、お母さんは、ブロウニーさんが殺される夢や、犠牲にしてきた仲間達の夢を見て、うなされるんだ…。」
「悲しいな…。でも…。」
伸ばした手をそのままにし、キュオネは僕を見る。不安そうにしている。
「多分、誰もキロを責めてない。」
僕は、言い切った。言い切りたいと思った。キュオネの為に。
「ありがとう…。」