小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

お加世

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

 やがて「敲き」が始まった。ビシッビシッと下役人の振るう笞が、お加代の身体に容赦なく敲きつけられていく。
「ああ……」
 一同が首を捻る。お加代の口から漏れたのは、呻き声にしては些か艶やかだったからである。
「手緩い! もっと激しく責め立てい!」
 森田一徳の怒声が飛ぶ。打ち方は更に激しく、お加代を打ち据えた。衣類がはだけ、柔肌が露になる。それでも森田一徳の命の下、激しい「敲き」が続行された。
「ああっ、んんっ、はあっ……!」
 お加代は眉間に皺を寄せてはいるものの、決定的な苦痛を与えているとは、居合わせた誰もが思っていなかった。むしろ快楽を与えているとさえ思えたものである。

 江戸時代、囚人への拷問には一定の作法があった。ことさら女囚に対しては配慮がされていたものだが、実際には有名無実であったことは言うまでもない。
 しかしこの時の北町奉行、加納主税は規律を重んじ、人徳のある人物であることで知られていた。配下の与力、同心はもとより、下役人から目明かしの一部に至るまで彼を尊敬する者は多かったのである。無論、森田一徳とてその一人であった。

 しかしながら、いくら責めても余裕の表情を崩さないお加代に、森田一徳は苛立ちを抑えることが出来なかった。現にお加代は、立ち上がった森田一徳の前で薄笑いを浮かべている。本来ならばとっくに失神して、水を掛けられてもおかしくない程の責めを、お加代は受けていた。
「貸せい!」
 下役人から笞を奪い取った森田一徳は、自らお加代の柔肌を打ち据えた。激しく込み上げる憎悪を笞に込め、所かまわず打ち据える。白く、たわわに実る乳房が、瞬く間に赤く腫れ上がる。
「ああ、んんっ……、はうっ……」
 だが、それでもお加代は妖しい薄笑いを浮かべていたのである。
「ぬぬっ、こやつ……!」
 森田一徳は激怒した。己が愚弄されていると思ったからである。そして手に握る笞を、先の割れた青竹に持ち替えた。
 これは当然、違法な拷問であった。そもそも女囚の場合は衣服を脱がしてはならない。
 ただ状況からして、お加代が下手人であることが明白であるにも関わらず、自白を引き出せない焦りが森田一徳にはあったのだろう。森田一徳がお加代のはだけた衣類を、直すことはなかったのである。
 森田一徳は容赦なく、青竹を振るった。
「はあっ……、あうっ……、くうっ……」
作品名:お加世 作家名:栗原 峰幸