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溶けるまでが氷

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彼女とは、時々メールを交わすことになった。店で会うことを約束したりもした。
彼女は、いつも俺の話を頷き、笑い、恥じらいながら聞いてくれた。時々、本性か?と思うようなことを言ったりして、こんな俺をどぎまぎさせることもあった。
三度目のデートでキスをした。俺にしては、ずいぶん奥手だったものだ。服越しだったが
胸の膨らみも知ることができた。まあ、本物かどうかは、曖昧なままではあったが知るまでに時間は掛からないと思っていた。

かっこよく言えば、かどうかはわからないが、誘いも少なくない。何となく付き合っている彼女や 店で意気投合して二軒目、三軒目と梯子して、そのままホテルへ行ったりもしたし、昔馴染みの女友達とも飲みに行ったりもした。
そういうことも、おそらく彼女の耳には聞こえているに違いないが、彼女はいつも変わらなく俺に優しい。あれっ、それって妬きもち?っていう言葉もあるけれど それを咎めたりはしない。そんな彼女との仲は いつまでも進展しなかった。
友達? 彼女? 恋人? 愛人?(結婚してないからそれはないが…) 
彼女って、俺にとって何なんだろう? ただの知り合いではないはずなのだが……。
可愛く、愛しいはずなのに別れた後は、現実が蘇らない。俺は眠っていたのかもしれないとさえ、感じることもある。彼女に聞けば、「大好き」だと言う。

夏の風が吹く頃、俺は彼女をデートに誘った。
彼女は、海が見たいというので、俺の知るとびっきり綺麗な景観の海へと向かった。
海岸線を走る。全開のウインドウは、熱い風を肌に流しながら、心地良さを感じさせてくれる。車が止まると、お互いに顔を見合わせて(暑いね)と笑みを交わす。
彼女の背中まである髪が風になびく。コンディショナーの香りが、潮の香りに変わり始めた。
海風。目的地は近い。
作品名:溶けるまでが氷 作家名:甜茶