小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

溶けるまでが氷

INDEX|3ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

「カルーア・ベリー。カルーア・ミルクに木いちごのリキュール、クレーム・ド・フランボワーズを加えたカクテルです」
やっぱり人を見ている商売だからか、マスターの作ったカクテルは彼女の雰囲気に合っていた。女性の魅力は持っているのに、俺の気持ちを騒がせない。いわゆるセックスアピールを感じさせる女として意識しないようだ。
だが、ふと見せる表情やしぐさに色気を感じるかと思えば、純情な面をのぞかせる。
マスターの含んだ笑いは、彼女に関わらないほうがいいよ、ということなのだろうか。

「珍しいお名前ですね」
「は? ああ、マスターが勝手にそう呼んでいるだけですよ。まあこの店ではそれで通ってますから、貴女もどうぞ」
二杯目のカクテルだからか、店内の間接照明の所為か、彼女の瞼と頬が紅潮し、瞳が艶やかに潤んで見え色気を感じる。おまけに結構酔ってきた俺は、彼女を好きになったように思えてきた。

《この女(ひと)に もう一歩女性を意識させたい》
男の性か、俺の悪癖か……。(笑)
少しばかり身に覚えのある経験は、彼女の隠れた部分に関心を持ってしまったようだ。

「ねえ、付き合ってみる?」
きっと彼女は、曖昧に言っても 分からないだろう。ストレートな言い方に彼女は、下唇を噛んで、小首を傾げる。ふっと目を細め、笑みを浮かべた彼女は「はい」と言った。 
(意味わかってんのか?)俺は、もう何杯目かわからなくなったグラスを空けた。
ついでに 彼女のグラスのカクテルも 手伝って飲んでやった。
さすがに 今夜酔わせてどうとかなんては 心だけに仕舞い込んでみた。
彼女と交換したメールアドレスに メールを送信してみた。
彼女のバッグで、揺れる携帯電話。マナーモードにしてあったようだ。
『おれおれおれ、酔ってます』
携帯電話を見た彼女は、隣の俺を見て笑った。
「わかっていますけど、返信したほうがいい?」
「エロメールなら受付けますよ」
意識と言動とを(何言ってるんだ!)と自分で戒めながら 俺は上機嫌だった。彼女が、嘘をつかなかったことも何故か安心した。
彼女は、おごったカルーア・ベリーを飲み終えると そんな俺を店に残して帰っていってしまった。珍しいこともあるもんだ。と、後からマスターに からかわれたまでは 覚えている。(ちょっと飲みすぎたかな……)
作品名:溶けるまでが氷 作家名:甜茶