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残り菊~小紅(おこう)と碧天~

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「これきりだなんて言わせねえ。お前はずっと俺のものだ。手放してなんかやらねえ」
 上からすかさず覆い被さってきた準平の眼(まなこ)が一瞬、妖しく輝く。
「なあ、小紅。俺はずうっとお前だけを見てきたんだ。御所人形が歩き出したかのような愛らしいお前をひとめ見てから、嫁にするなら、この娘しかいねえと心に決めてきた。だから、俺を受け容れてくれ。お前が受け容れてくれるなら、俺はもう吉原にも行かねえ。金輪際、お前しか抱かないと今、ここで約束する」
 準平の眼は怖いほど真剣だった。その瞳に嘘はないことは小紅にも判る。けれど、かといって、好きでもない男にこの場で身を任せろと言われて、素直に従えるはずもない。第一、彼の求愛は、あまりにも一方的すぎる。
 これでは、ただ自分の想いを押しつけているだけだ。
「ごめんなさい。あなたの気持ちはありがたいとは思うけど、私には無理だわ」
「どうして? 好きな男でもいる?」
「好きな男なんて、いない。でも、私は」
 あなたが嫌いだからとは流石に言えなくて、小紅は言葉につまった。
「どうしても、俺のものになっちゃア、くれねえのか」
「―ごめんなさい。私、やっぱり」
「なら、もう良い」
 その一言で、小紅は準平が自分を諦めてくれたのかと思った。しかし。
 彼は憮然として言った。
「惚れに惚れ抜いた女だから、できれば手荒なことはしたくなかった。特にお前は初めてだろうから、優しく抱いてやるつもりだったんだ。でも、お前がどうしても俺を拒み通すっていうんなら、しようがねぇ」
「準平さん?」
「観念しな、小紅」
 準平は上から小紅を押さえつけると、顔を近づけた。口づけされるのかと警戒したのに、準平はいきなり首筋に唇を押し当ててきた。―かと思ったら、ねっとりとした舌で首筋を舐められ、小紅はあまりの気持ち悪さに悲鳴を上げた。
「いやっ」
「お前の声にはそそられるんだよな。?いや?が?良いわ?とか?来て?にしか聞こえないんだ」
 何を馬鹿げたことを言っているのだ、この男は。
「お前の肌って、何か良い匂いがする。香水でも付けてるのか?」
 そんなものは付けたこともない。だが、応えてやるつもりはなかった。
「ふうん、黙(だんま)りを決め込むつもりか。それなら、それで良い。その中、嫌でも声を上げるようにしてやるから」
 準平はまるで犬がするようにペロペロと舌でうなじを舐め上げてゆく。その度にゾクゾクとした痺れのようなものが背骨を駆け抜けてゆく気がして、小紅は身を竦ませた。
「さて、次はどこを味わってみようかな」
 準平は面白そうに言い、小紅を眺めている。彼がおもむろに帯を解き始めたので、小紅は狼狽えた。
「お願いだから、止めて。準平さん、こんなこと、止めて」
「可愛い小紅のお願いなら何でもきいてやりたいのは山々だが、これだけは無理だな」
「いや―。いやっ」
 小紅はありったけの力を出して暴れるも、今回も抵抗はいともあっさりと抑え込まれた。力では叶わないのは嫌でも判っている。
「準平さん、私、いやなの。お願い、止めて」
「なら、出ていかないか?」
 小紅はコクコクと頷いた。この男の傍にはいたくないけれど、無理に身体を奪われるよは、はるかにマシだ。
「いや、やはり駄目だ。幾ら約束しても、お前はいずれここを出ていくに決まっている。俺にお前をつなぎ止めておくためには、身体を俺のものにするしかない」
「約束は破らないから、ずっとここにいるから」
 頬が濡れているので、小紅は自分が泣いているのだと判った。鼻の奥がツンとする。
 準平が何かの痛みに堪えるような表情になった。
「俺だってお前を泣かせたいわけじゃねえ。だが、お前をつなぎ止めておくめには、こうするしかねえんだ。後生だから泣かないで、大人しくなってくれ」
 準平は手慣れた仕種で小紅の両手を片手で纏め、空いた方の手で器用に帯を解いてゆく。まるで少年ではなく、年のいった遊び慣れた男のように女の扱いに長けているのは怖ろしいほどだ。
「俺は何で昔っからお前に嫌われるのか判らねえんだ。確かに俺は放蕩三昧で、評判も良くねえ。傑出した親父に比べられちゃア、いつも出来の悪い馬鹿息子だと陰口をたたかれてきた。だがよ、お前が俺のものになってくれたら、吉原通いもきっぱり止めて、お前一人だけにすると誓えるし、商いも真面目にやろうと思ってるんだぜ? だから、良い子になって聞き分けて、俺に抱かれるんだ。良いな?」
 準平は小紅をかき口説くのに必死だが、小紅は死に者狂いだった。だが、抵抗は空しく、帯はすべて解かれた。準平は小紅にのしかかった身体に少し力を加え、唇を奪う。
「―!」
 小紅は涙眼で烈しく首を振った。強引に口をこじ開けられ、舌が挿し入れられる。歯列から歯茎までなめ回され、逃げ惑う舌を無理に絡め取られ烈しく吸い上げられれば、あまりの気持ち悪さに気が遠くなりそうだった。
 深く唇を合わせながら、準平の手が次第に下方へと降りていく。口づけに気を取られている小紅はまったく気づいていなかった。
 その隙に男の手が着物の合わせをグッとくつろげた。合間から遠慮のない手が侵入し、まろやかな乳房を包み込み、ゆっくりと揉みしだいてゆく。更に力をこめて前をひろげると、完全に乳房が男の視線に晒された。
「想像したとおり、綺麗な胸だな。色も綺麗だよ、小紅」
 もう、我慢できない。準平が呟き、小紅の朱鷺色の果実を口に含んだ。乳輪ごとすっぽりと銜えて引っ張られると、また得体の知れない痺れのようなものが四肢を駆け抜ける。
 彼はいたいけな胸の突起を銜えて引っ張ったり、舌で乳輪を円を描くようにゆっくり舐めたりとあらゆる技巧を凝らして乳房に愛撫を与えた。
 死ぬほど気持ち悪くて恥ずかしい。嫌なのに、不思議に男の口に乳房の突起を銜えて引っ張られ、更に舌で弾かれてなめ回されると、妙な例の痺れが下半身を貫く。その痺れは何かの熱を少しずつ呼び覚ましてゆくようで。その淫らな熱は何故か小紅の下半身に少しずつ溜まっていくようだ。
 おかしい。下半身の中心が熱くなっている。それに何だか濡れてきているようだ。粗相をした憶えもないのに、大切な場所が潤み、失敗をしてしまったときのように熱い液体が滲み出ている―。
 小紅は居心地の悪さに、しきりに両脚をすり合わせた。
 ひとしきり胸を弄り回していた準平が漸く顔を放した。
「そろそろ濡れてきたみたいだな。少しは良くなったか?」
 濡れてきた? 良くなってきた?
 訳の判らない科白の羅列にきょとんとしていると、準平は小紅の両胸を下から両手で持ち上げるように掬い上げた。大きなふくらみは男の手にも余るほどだ。指の間から、愛撫によって紅く熟した乳首がまるで嫌らしい果実のように唾液に濡れ光って顔を出している。
「お前は本当にどこもかしも可愛い。可愛くて堪らない。食べてしまいたいよ」
 準平は顔を近づけ、チュッチュッと音を立てて指の間から覗くいたいけな乳首に吸いついた。
「あうっ」
 その刹那、思わず洩れ出てしまった声は、自分ではない別の女のもののように艶めいていた。
「小紅の嫌らしいところがどんなになっているか、見てみような」