これも愛あれも哀
その夜のお兄ちゃんは
とても優しく私の中に入ってきた。
「大丈夫だよ」
「だって、怖いよ…」
「いつもみたいにして」
「大丈夫かな」
お兄ちゃんは、お腹の赤ちゃんのことを考え
不安がった。
私は物足りなくて、お兄ちゃんに
「もっと」とねだった。
結婚したら、お兄ちゃんにつきまとう女の影に
ビクビクしないですむ。
ヤキモチ焼いてケンカをすることもなくなる。
私は「結婚」という「紙約束」で
お兄ちゃんの全てを手に入れることができると思っていた。
「写真、撮ろうか?」
煙草の煙を吐きながらお兄ちゃんが言った。
「写真?」
「ヌード写真」
「ほら、そこに横になって」
お兄ちゃんは、私を真っ赤なソファーに横にさせ
思いっきりエロティックなポーズをとらせ
安いデジカメで連写した。
「いいねえ」
私の表情は哀しかった
多分。
私は、その真っ赤なソファーに裸で横たわる
女の写真を何枚か見たことがあった。
お兄ちゃんの引き出しに隠してある
SDカードの中に、今までの彼女との想い出を
大切にとってあったんだ。
私は、その女たちの中で、一番綺麗に
残ってやろうと思った。
若くて
綺麗で
エロティックに…
何も知らないフリをして。