これも愛あれも哀
結局私は、金木犀の香りが
街を包む日が来るまで
お兄ちゃんのマンションで毎日過ごした。
お兄ちゃんは、毎日のように
私を料理するのに、避妊することはなく
ある日、私は聞いてみた。
「ねえ、赤ちゃんできてもいいの?」
「オレはいいけど、そっちはダメだった?」
「私のこと……愛してる?」
「愛してなかったら抱かないよ」
その日は何度も「愛してる」という
5文字を確認し合うかのように囁き、
いつもより激しく愛し合った。
「お兄ちゃん…寝た?」
「うん?」
「明日、一度、帰るよ…」
「なんで?」
「帰れって言ってたじゃない」
「急だな」
「急に思いついた」
「戻ってくるよね」
「うん、ねえ、窓開けて」
夜風が心地よく滑り込み、
汗ばんだ白い肌を優しく撫でた。
髪をかきあげるとお兄ちゃんが言った。
「お前、色っぽくなったね」
薄明るい月の光の中で
見つめ合って
もう一度、お兄ちゃんが私の中に入ってきた。
「あいしてるよ」