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あの日のキミにごめんね

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「克弥君、久し振りね」
「やっぱり、万里ちゃんだよね」
万里子は、幼いときを思い出すような笑顔で克弥に微笑んだ。
「今、どうしてるの? こっちに住んでるの?」
「うん。お父さんが、またこちらの勤務になったから」
「連絡くれてもいいじゃない」
「だって、かっちゃんの携帯番号なんて知らないんだもん。同じ大学ってことだって驚いているくらいだもの」
克弥と万里子の会話のテンポが、あの頃に戻っていくようだった。
「今度、休みの日に会わないか。それと、今 付き合ってる人いるの?」
「さあ」
夏の香りの風が吹いた。
肩まである万里子の髪は揺れた。きらきらと美しく光った。
その横顔は、綺麗で優しく、克弥の心を刺激させるには充分だった。
だが、万里子は、慌てたように髪を押さえた。左の片方だけ押さえて、顔を背けた。
「あの時の?」
「もう、会わない」
「どうして? また会えたのに」
万里子は、あの時、あの別れた日の時のように寂しそうな笑顔になっていった。
「僕のこと、嫌い?」
克弥を見た万里子の目は、明らかに否定をしているようだった。
何度もゆっくりと首を横に振り、「違う」と呟いた。
暑い陽射しを大きな雲が遮って、暫く翳った。翳りの中、ふたりは、何もしゃべらず見つめ合っていた。克弥の手が、髪を押さえた万里子の手を退けた。
さらさらと髪が揺れ、少し引き攣れた傷跡が見えた。
「僕は、ずっとずっと前から、転校してきた日から、万里ちゃんが好きなんだ」
「ダメよ。かっちゃん優しいから、そんなこと言って」
克弥には、その意味がわからず、小首を傾げた。
「こんな傷を作っちゃったから、仕方なく言ってくれたのでしょ?」
大きな雲は、風に乗ってまた陽射しが二人を照らした。

作品名:あの日のキミにごめんね 作家名:甜茶