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あの日のキミにごめんね

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そんな悲しみと寂しさも時間という薬が、いつしか癒していった。
地元の中学、進学校の高校、そして少し自由を手に入れた大学生活を送り、克弥は大学最後となるだろう夏を迎えていた。
就職掲示板のある校舎から出て キャンパスを歩いている時だった。
前方から三人の女子大生が歩いてきた。克弥の学部は、男子の方がかなり多い。キャンパスで女性と会うことも少なかった。
「こっちのキャンパスに来るのなんて、入学の時以来かも」
「うそ。その年の文化祭に来たじゃない」
「ねえ万里子はどう?」
克弥の耳が、その名に反応した。女子を避けるようにそむけていた視線を彼女たちのほうへ向けた。
「あ」克弥自身、その反応の軽さに驚いたが、目の前を面影のある万里子が通り過ぎようとしていた。
万里子にも その男子が克弥であることは、すぐにわかった。小さく声を発したが、そのまま通り過ぎようとしていた。
「ま、待って」
克弥の呼び止める声に女子のひとりが反応した。
「はい、何か? あ、此処の人? 就職課ってこの道行けばいいんですか?」
「万里ちゃんだよね」
「え? ねえ万里子の知り合い?」
「ううん、知らない。さ、行きましょ」
「ごめんなさい。この子 知らないって。人違いみたいよ」
彼女たちは、万里子を真ん中に挟んで、校舎のほうへと歩いて行った。
克弥は、その後ろ姿を見送りながら、彼女たちが出てくるのを、芝生に置かれたベンチで待った。
やがて、先ほどの三人が出てきた。克弥は彼女たちの前へと歩み寄った。
「あのぉ、しつこいと人を呼びますよ」とひとりの女子が強い口調で克弥に向かった。
「あ、僕は…」と克弥は、言葉を探し、俯いた。
「ねえ、悪いけど、表通りのファミレスで待っていてくれない。少し話したらすぐに行くから。大丈夫」
「ほんとに? もし変な事になったら、すぐに携帯鳴らしてよ」
二人の女子は、万里子と克弥を気にしつつ、去って行った。

作品名:あの日のキミにごめんね 作家名:甜茶