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水岡 きよみ
水岡 きよみ
novelistID. 46973
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みずいろ

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電車に揺られて20分。

わたしは、ショッピングモールの最寄り駅の出口にいた。


改札を出るなり、出口方面から楽しげな音楽が聞こえてくる。
気になった私は、思わず駆け足で出口へと向かってゆく。

そうして気がついた。


(あ…)


そう。
何を隠そう、そこで愉快な音楽を紡いでいたのは、わたしのお気に入りのローカルバンドだ。

彼らは、ギター&ボーカル・ベース・パーカッションの3人組で
1年前にメジャーデビューもしているし、CD屋で売ることができるCDも何枚も出しているのだが、
まだ知名度は全国的でなく、県内を中心にストリートライヴなどの活動を重ねていた。


私は、彼らがちょうどメジャーデビューした1年前の4月、つまり中学2年の頃から彼らのファンだった。

人との繋がりを大切にし、幅広い世代を受け入れる暖かい音楽は、当時友人が少なかった私にとって希望の光であった。


たまらず私は、彼らを取り囲む輪の中に飛び込んでゆく。
周りの目なんか気にも留めずに、歌い、手拍子を打ち、全身を揺らしてリズムを感じる。

音楽とは私にとって快感なのだ。
音楽は、世界を変えるはずだ。

当時のわたしはそう信じて疑わなかったくらいだ。

音楽ほど強烈な新興宗教はこの世に存在しないだろうとさえ今のわたしは思う。


そんな、新興宗教の信者のように音楽を楽しむわたしに気づいたメンバーのひとりが、私に話しかけてくる。
作品名:みずいろ 作家名:水岡 きよみ