幸福の指輪
誰かを殺めた罪悪感よりも、生き残ったという事実が、ぼくの心を満たした。戦いに勝利した高揚が、ぼくの体を包み込んでいく。アドレナリンが体中を駆け巡り、誇らしげな気分になった。
ぼくは……生き残ったんだ。床に倒れ伏し、動かなくなった男を見下ろして、ぼくは勝利の恍惚に浸る。
誰かに、この功績を伝えたかった。
直情的な動作で、ぼくは母さんの方を振り返る。難しい理屈なんて無く、ただぼくが生き残った事……闘争に勝利したことを知らせたかった。
「母さん、ぼく―」
そこまで口を開きかけて、ぼくは言葉を続ける事が出来なくなった。