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誰か彼を探して

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ブスコバンを処方してもらい
胃をつき刺すような痛みはだいぶ和らいでいた。
食事ができるようになるまで、「しばらく点滴においで」と
病院の先生が言っていたが
朝っぱらから、ファミレスの店長からの電話で
起こされた。
突発で休んだパートのおばさんの変わりに
ランチの時間に入って欲しいというのだ。

一旦は断ったものの、仲間のことを考えると
やはり気になって出勤することにした。

ランチの戦争が一段落し、客も道路沿いの窓際に
チラホラ程度になり、店内も落ち着きを取り戻していた。

太陽が傾き、西日が射してきたので、大きな窓のロールカーテンを
下げていると、副店長が近づいてきた。

「今日は悪かったね」
「今日も。ですよ」

色白で、店長とは正反対の少し神経質そうな副店長の言葉に
私は笑いながら答えた。

「あのさぁ、今度の日曜日、デートしない?」

私は驚いた。
多分、10歳くらい年の差があるのではないかと
思っていたから、最初から恋愛対象ではなかった。

副店長の森下さんは、とても優しくて
「いいひと」だ。
断りづらかった…。

「無理なら…」
「だ、大丈夫です」

これからもアルバイトを続けるつもりだった私は
断れなかったし、「いいひと」を
傷つけたくなかった。

「じゃ、今夜、電話するね」

森下さんの後ろ姿が、なぜか笑っているようで
私は「いいひと」になった気がした。

そんなの……ただの偽善者だ。

ああ、私はやっぱり偽善者なんだと
確信した。
J.Jのことだって結局そうなんだ。
自分より弱いと思った者に優しいフリして
手を差し伸べる。
自分を必要としてくれてると思うことで
満足を得る。
本当の自分を見つけながら
本当の自分がドンドン嫌いになっていった。

風が強いその夜は
大きな三日月だった。

大きなバナナボートのような三日月に
J.Jと並んで乗りたい。
流れ星を見つけたら、すかさず私は祈るだろう。

「ずっと、そばにいてね」って。


作品名:誰か彼を探して 作家名:momo