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誰か彼を探して

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結局私は、J.Jに電話することはできなかった。

J.Jと何度も並んで歩いた
並木通りで、偶然再開できるのではないかと
サプライズを期待しながら
ゆっくり
自転車をこいだ。

私は、何でもすぐに
白黒つけたい性格だ。
裏表がないといえば聞こえは良いが
自分勝手で、わがままなだけなのだ。
そんな私が、何を躊躇しているのだろう。
怖かった…。
J.Jを失うことが怖かった。

シャツの襟はじっとりと汗ばみ
ファンデーションと汗の混じった
顔のベタつきを早く洗い流したかった。

信号待ちで、日陰で休むと
軽い目眩がした。
喉が渇いた。

自転車のハンドルを汗ばむ手で握り締めた、
胃がキリキリ痛む。

J.Jに会いたい…。

その夜は花火大会だというのに
私は急性胃腸炎で病院に運ばれた。

病院の硬い簡易ベッドで点滴を受けながら
夢を見た。

J.Jと二人で花火大会に出かける。
手をギュっと握っているのに
いつでも、いつのまにか人ごみに紛れ
離れ離れになってしまうからと
今年はタダで入れる区役所の20階から
花火を見ようと、薄暗い建物に入っていった。

沢山、人がいるだろうと想像していたのに
花火を見に20階までエレベーターで上がっていく人は
いなかった。

東京タワーも東京スカイツリーも新宿の高層ビル群も
横浜のランドマークもロマンチックに輝き、
大きな通りの車のライトは川の流れのように
どこまでも続いていた。

北側の空で
打ち上げ花火が始まった。

「あれ? なんか迫力無いね」
「本当だ。どうしたんだろうね」

ガラス越しに見る打ち上げ花火は
カメラのレンズから覗いているような
家のテレビで見ているような
ガッカリするような輝きだった。

「わかったよ!」J.Jが叫んだ。

「なに!?」

「音だよ! 窓ガラスが開いてないから音がこもって迫力無いんだ」

そう叫ぶと、絶対に開かないはずの
高層ビルの窓ガラスをJ.Jがいとも簡単に外したかと思うと
いきなり突風が吹きJ.Jが窓の外にさらわれた。

私は一瞬声が出なく、息が止まった。
夢!?と思って
目が覚めたとき
「ぎゃー」と叫んだ。

処方箋を薬局に出し、薬を待っている間中、
明日こそ、彼に電話をしようと
決心していた。

作品名:誰か彼を探して 作家名:momo