社会保障番号 Hiroko
ひろみの部屋に入る
私は、佐伯ひろみの部屋に入る。どこの家にもテレスクリーンが壁に掛けかけてある。監視カメラ付きの壁掛けテレビ。
彼女の部屋は、女の子らしいものが何もない殺風景な部屋。荷物が少ないから、部屋が片付けやすい。いつでも引越しできるために、あえて荷物になるものを買わない。
メモ用紙をもう一枚わたした。
『知っていると思うけど、政府を批判するような話題を避けてね』
ウインクしてちゃんと理解したか確認した。
「私を誘ってくれてありがとう」
「いいえ。今は紅茶しかなくて。TPPで今まで当たり前のようなものが、高級品になって」
私は、ひろみを睨みつけた。
ひろみは、不味いことを言ったと悟って、別の話題に変えた。
「で、7インチ・タブレット端末に電子ペーパー書籍、電子メモでしょう。最近は何でも電子化して」
「そうね。ねえ、音楽は何が好きなの」
「最近の音楽は内容が難しくって。なんか暗号みたいで。クラスメイトで」
再度、ひろみの目を見て睨みつけた。
「お茶飲んだら、外の空気を吸わない。頭が冴えるし。ねえ、一日に何時間、勉強をするの」
「3時間くらいかな・・・。ゲーム機には興味がなくて」
「私も。どっぷり浸かっると危ないし。超高画質でしょう。空気を感じるほど画面がきれいだし」
「そうだわ。今は4Kの高画質は当たり前、ゲーム機だと8K高画質だし」
「そう、高精細な写真が動いているみたいで。ねえ、外の空気を吸わない」
そして、私はメモを、もう一度渡す。筆談で、ひろみに注意を促すために。
作品名:社会保障番号 Hiroko 作家名:ぽめ