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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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コウタと嘉助と浜昼顔

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 ケンタは毎晩、小家名の浜で二人の無事を祈っていました。もう、かなりの年になり、目もかすみ、きばもぬけていました。自分が死ぬ前に、なんとかふたりの元気な姿を見たいと思っていたのです。
 南の島では激しい戦いがくりかえされ、とうとう敵の襲撃でコウタは撃たれてしまいました。
 コウタは嘉助の腕の中で、あえぎながらいいました。
「なさけねえな。戦ごっこの名人が……。本物の戦で、このざまじゃ……」
「コウタ。しっかりしろ」
「嘉助。おまえは生きて帰れ。ケンタと約束したもんな。小家名の浜でまた会おうって」
「だめだ。お前と一緒に帰るんだ。コウタ。生きろ!」
 嘉助の悲痛なさけびもむなしく、コウタは息を引き取りました。
「だれにもおまえをふみつけにはさせないぞ」
 嘉助は浜辺に深く深く穴をほって、コウタのなきがらをうめました。
「こうやって落とし穴をほったもんだな。コウタよぅ。あのころは楽しかったなあ」
 嘉助は一晩中、コウタをうめた砂浜で、思い出話をしながら泣き続けました。
 その頃、小家名の浜にいるケンタにも死のかげがしのびよっていました。ケンタは海を見つめながら、静かに目を閉じました。幸太や嘉助と遊んだ思い出が、うかんでは消えていき、やがてケンタはこときれました。
 しばらくすると、ケンタのなきがらから、つるがのび、葉が生えてきたのです。ケンタは浜昼顔になりました。
 戦争が終わって一年後の秋、嘉助は小家名の浜に帰ってきました。ケンタといっしょにコウタの遺品を浜にうめるつもりでした。
 けれど、ケンタの姿は見えません。
「ケンタ」
 嘉助はケンタの名を呼びましたが、ふと、あしもとに季節はずれの浜昼顔の花が咲いているのに目をとめました。
「ああ」
 この時、嘉助はこの花がケンタだと知ったのです。


 コウタはいつのまにかもとの駐車場にいました。一人で浜昼顔の前にたたずんでいたのです。
 そして、一部始終を見ていました。幸太の姿になっていた自分が死んだあとも、ケンタが浜昼顔になったことや嘉助が男泣きに泣いていたことも。
 まるで空気になったように、姿はなくても自分の頭の中に、それらのようすが手に取るようにうかんできたのでした。
 
「コウタ。コウタったら、なにしてるのそんなところで」
 お母さんの声でコウタはわれに返りました。涙で顔がぐしゃぐしゃです。