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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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コウタと嘉助と浜昼顔

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「ひいおじいちゃんがいってたとおりだ。ここは昔、砂浜続きの原っぱだったって」
 アスファルトの割れ目がもり上がって、そこから無数のつるがでています。青々と茂った葉は金あみのさくの上までのびていました。
 でも、浜昼顔の花の季節は夏のはずです。もう秋だというのに、たった一輪咲いているので、コウタはふしぎに思いました。


 しゃがんで、ためつすがめつ花を見ていたコウタは、何気なく呼んでみました。
「ケンタ」
 すると、まるで返事をしたように、ピンク色の花がかすかにゆれました。
「まさかね」
 コウタは笑いながら首をすくめ、立ち上がって、車にもどろうとしました。
 その時です。
「コ……ウ……タ」
という声が、かすかに聞こえました。
「え?」
 コウタがふり返ったそのとたん、まわりの景色が一瞬にして変わってしまったのです。
「あれ?」
 コウタはびっくりして、あたりを見まわしました。どうしたことか、銀行の駐車場も建物も消え、広い原っぱになっています。
 山よりの方にぽつぽつと家があるばかりで、目の前には低い草の生えた原っぱが砂浜まで続き、砂山が波のようにうねったその先には海が見えます。

「おーい。こうた」
 遠くから声がしました。ふり向くと、山の方から何人もの少年たちが手をふりながら走ってきます。みんな小学校の高学年のようです。
 コウタは自分より年上の子どもたちがやってくるので、少しこわくなりました。
 けれど、その少年たちが近づいたとき、コウタは肩をならべるくらい、いえそれよりも少し大きいくらいの背たけになっていました。
(あれ? ぼく、大きくなってる。六年生の人みたいだ)
 足元を見ると、今まではいたこともないぞうりをはいています。そばにやってきた子どもたちも、ほとんどぞうりをはいていて、中にははだしの子もいます。
 おまけに着ているものは、たけの短い紺のかすりの着物なのです。
 ぼうっとしているコウタに、ひとりが言いました。
「こうた。何やってんだよ。もう西のやつら、権現山(ごんげんやま)に集まってるぞ」
 コウタは、見覚えのあるその顔をじっと見つめました。
「あ、ひいおじいちゃん」
 思わず大きな声をだしました。そうです。いつか写真を見せてもらった子どもの頃のひいおじいちゃんの顔です。