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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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コウタと嘉助と浜昼顔

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「ひっぱってもひっぱっても、昼顔のつるでな、わしらはとうとうつかれてしまったんだ」
「それでどうしたの?」
「いやあ、それがキツネのケンタだったのさ」
「昼顔のつるが?」
 コウタはびっくりして目をぱちくりさせました。
「ああ、ケンタは子どもに化けて山から下りてきてな。落とし穴に落ちたとき、かんしゃく玉の大きな音にびっくりして、そばにあった昼顔になっちまったんだよ」
「あはは。へんなの」
 コウタは笑いました。
「それでな。もどろうにもキツネにもどれなくて、昼顔か、最初に化けた子どもの姿にしかなれんようになっちまったんだ」
「かわいそうだね。それからどうなったの」
「わしらはキツネにケンタっていう名前をつけてな。仲間に入れてやったのさ」
「最後はキツネにもどれたの?」
「ああ、もちろんさ」
 話の続きはまだまだあるのですが、そのとき、コウタのお母さんがやってきました。
「大おじいちゃんたら、おそいからどうかしちゃったのかと思ったわ。いくらコウタといっしょでもまだ七歳だし……」
 いつもより帰りがおそいので、心配してむかえに来たのでした。

 キツネの話はそれっきりのまま、ひいおじいちゃんは具合が悪くなって入院してしまいました。
 コウタはお母さんと病院へ行きましたが、ひいおじいちゃんは眠っていることが多く、コウタが話しかけても返事をすることがありませんでした。
 それでもコウタは、病院へいくたびに、ひいおじいちゃんの耳元に話しかけました。
 ある日、いつも眠っているひいおじいちゃんが、コウタのよびかけに答えるように、うっすらと目をあけました。そして、口を動かして何か言ったのです。コウタはひいおじいちゃんの手をそっとにぎりしめました。
 病院からの帰り、お母さんがいいました。
「コウタ。ちょっと銀行へよるわね。いっしょに来る? それとも車の中で待ってる?」
「いっしょにいくよ」
 コウタはお母さんと車からおりました。ところがその時、駐車場のすみっこの方に、ピンク色のものがゆれているのが見えました。
 それがとても気になったコウタは、
「お母さん、やっぱりぼく、ここにいる」
といいました。
「そう? 危ないから車にはいってなさい」
「うん」
 お母さんが銀行に入っていくのを見てから、コウタは気になった場所へ行ってみました。
 それは浜昼顔の花でした。