Lipstick
the Secret Garden
「こうかなー、、、ちがう?
どう これ
__ ん〜
「じぁ こう
__ちょっと ちがうかな〜
「ん〜
__わるくはないんだけど〜
「どっちなのよぉ
__わるくはないのよ〜
「はっきりしなさいよぉ
__でも、、
「 ア、、、れ
__それよッ
そうじゃない、、
それそれッ!
「こう?
__それだったら☆
「・・・
__すごくいいわよ♪
「そうかな♪
__フフフ♪
「うふふ
__クスクス
少女は女の子を相手に、いろんなポーズをとってみた。
いろいろと試しているうちに、ある角度から見た女の子の顔がそれまでとはぜんぜん違った顔のように見えたのだ。その顔の角度を保ったまま、鏡に近づいたり、離れたりして、女の子が以前とは変わっているのを何度も繰り返し確認してみた。
それは単純に、それまではそんな角度から女の子の顔を見たことがなかったせいなのだが、少女にとってはまるで新大陸を発見するくらいの驚きとトキメキに満ちた偉大な発見であった。ふたりはワクワクしてきて、ついに魔法の効果が現れたんだと確信する。
「まってて きがえてくるから
少女は部屋から飛び出した。すると今までに三回くらいしか着たことのない、よそ行きの服をさがしにタンスの部屋へとやって来た。少女はその服についている赤いリボンが大好きだった。母親には汚すといけないからと言われていた。
一番上の引出しにしまってあるはずの特別な日のためのお洋服。
少女は今、とにかくそのリボンの服を着なければならない。
そうして大好きな服に着替えてから、少女は再び女の子の前に戻ってくる。
顔をさっきの角度にしてやると、鏡からちょっと離れたところに立ってみて、全身を鏡の中に納めてみる。
そこに立っているのは魔法の力で完全に変身した、これまでとはまったく違う女の子の姿であった。
すっかり満足して嬉しくなってきた。
目の前にいるのは、少女の知るいつもの女の子ではない。泥団子を持って帰ってお母さんを困らせる女の子とは違う、もっと素晴らしい、ずっと価値のある女の子にちがいなかった。
胸の中ではワクワクの風船がどんどん膨らんでいく。風船が胸いっぱいに膨らんだ頃には、少女の身体はフワフワと浮いてしまいそうになっていた。いっそ風に吹かれてどこかに飛んで行ってしまいたい。そんな気分になっていた。
すると女の子が鏡の中から囁いた。
__みんなに見せてあげようよ
「え?
__見せてあげよ☆
「……、ど〜しようぉ〜
『すぐかえるから おうちにいてね 』って言って
ママは びよういん にいったの
__そうなの?
「うん…
__じぁさぁ〜 わたしが代わりにいってきてあげるよっ☆
女の子は少女の顔をじっくりと眺めたあとにそう言うと、部屋から飛び出して行ってしまった。もちろん少女もすぐに女の子を追いかける。
少女は階段を駆け下りると急いでお気に入りの靴をはき、期待に満ち溢れた扉の向こうに飛び出した。