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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 4 父と子、母と子

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「・・・わかった。そういう事情ならジゼルの事は引き受けるよ。ただ、正直な話、子どもの面倒の見方なんてよくわからないんだよね。ウチは基本的の男所帯だし。」
「誰かいないのか?職人の奥さんとかさ。」
 アンドラーシュの言葉にルチアは腕を組んで考え込んだ。
「うーん・・・職人はウチの人間だけど、その女房はウチで雇っているわけじゃないからね。簡単に頼むってわけにもいかないし。」
「それなら、私が残るわ。どうせ来年にはランドールがセロトニア大使になる予定だから、丁度いいし。」
「リィナが残ってくれるなら安心だ。来年ランドールが来るころにはあたしのお腹の子も生まれているだろうし、賑やかになるね。」
「え?」
「ん?どうしたんだい?」
「ルチア、あなた妊娠しているの?」
「ああ。医者の見立てじゃ5ヶ月だって。もちろんアンドラーシュ、あんたの子だよ。本当はもうちょっと安定してから報告しようと思っていたんだけどね。」
 照れくさそうに顔を赤くして頬を掻くルチアに対して、アンドラーシュとリィナの顔色はみるみるうちに青くなっていった。
「・・・まずいな。」
「まずいですね。」
「二人共どうしたんだい?喜んでくれないの?」
 二人の様子を見て、何かがおかしいと思ったルチアが首をかしげる。
「あのね。ジゼルはあなたとアンドラーシュ様の子ということにして育ててもらおうと思っていたのよ。さっきも言ったようにシモーヌの子という事は表に出せないし、他人に預けるわけにもいかない。」
「うん。それは聞いたけど。それがどうしたってのさ。」
「・・・二人目が6ヶ月くらいで生まれたら、おかしなことになるだろう?」
「あ・・・。」
「まいったな・・・。とりあえずジゼルはリィナに育ててもらって、ルチアの子が生まれた後で双子だってことにするか。」
「それだと、結局グランボルカには連れて帰れませんよ。それに6ヶ月もすれば、ジゼルも成長しますから、双子だって言い張るには無理が出てくるとおもいます。」
「・・・だったらさ。・・・だったら、ジゼルだけがあんたの子だってことにすればいいだろ。あたしはあくまでジゼルを預かっただけ。この子はあんたの子じゃない。それで全部解決じゃない。」
 しばらく考えた後、泣き笑いのような顔でルチアが自分のお腹を触りながらそう言った。
「ルチア・・・。」
「どうせあたしは侯爵夫人ってガラじゃないしね。大丈夫、ジゼルもお腹の子もちゃんと育てるから。安心して。」
「ルチア。あのな・・・。」
 何かを言おうとしたアンドラーシュの腹をルチアが思い切り殴りつけた。
「昔から、ルチア先輩だ、つってんだろ。・・・あたしとアンタはもう恋人でもなんでもないんだから。馴れ馴れしく呼び捨てになんかするな。」
 二人に背を向けて、ルチアが肩を震わせてそう言った。
「ルチア、それって・・・。」
「・・・この子はあんたの子じゃない。あたしが、どこの馬の骨ともしれない男との間に作った子だよ。だからあんたの子はジゼル一人。それでいいね?」
「ルチア待て。別にジゼルの母親を別の人間だっていうことにすればいいだけで、そうすればお前もその子もジゼルも俺の所で暮らすことができる。」
「じゃあ、ジゼルだけが、肩身の狭い思いをして暮らすの?小さいうちから、妾腹の子だって陰口を叩かれながら?そんな可哀想なことできるわけないだろ。」
「それじゃ、お前の子が・・・」
「うちの奴らがそんな事を気にするわけないだろ。ジゼルだってこの子だって、笑って受け入れてくれるよ。・・・ジゼルはここで育てて、大きくなってほとぼりが冷めたらあんたに返す。それでいいね?」