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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 4 父と子、母と子

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「・・・許せない。」
 話を聞き終わったソフィアは顔を歪めて一言そうつぶやいた。
「そうね、許して欲しいなんて、とても言えることではないわ。でもね、そのおかげで助かった部分もあるのよ。ある意味、ルチアとソフィアちゃんは、世界を救ったともいえるわ。」
「どういう・・・ことですか?」
「十年前、扉が開ききらなかったのは、陛下がジゼルちゃんの存在を知らなかったからではないかしら。扉が開ききらなかった原因について扉が開ききる前に、エドちゃんを助け出したとか、陛下が正気に戻ったとか、色々な予測はたてられるけど、真相は鍵としての力を持つジゼルちゃんがそこにいなかったからっていうことだと思うわ。」
「でも、そんなの。お母さんが可哀想・・・。」
 うつむいて唇を噛んだソフィアの目からポタポタと音を立てて涙が床に落ちた。
「そうね。でも、今でもアンドラーシュ様が結婚なさらないのは、ルチアに対して心を残しているからじゃないかしら。そんなことで罪滅ぼしのつもりになられても納得なんかできないかもしれない。でも、あの方はあの方なりに、責めを負っているわ。許してあげてなんて言えない。でもね、彼の苦しみや、もどかしさをわかってあげて。娘に憎まれたい父親なんて、いないのだから。」
 リィナがソフィアの頭を抱えるように抱きしめて、優しく撫でる
 ソフィアは声を上げずに泣いていた。
 アンドラーシュとの事を思い返してみれば、リィナの言っていた彼のもどかしさや辛さに思い当たる事がたくさんある。
 結婚してすぐにセロトニアを出て、レオと二人放浪していた時に手を差し伸べてくれたのは、誰でもないアンドラーシュだった。二人がジゼルの幼馴染であることを差し引いても、レオがアンドラーシュ直属のスカウトに抜擢されたのは、異常とも言える人事である。考えれてみればあれは、娘婿である彼を出世させるためだったのではないだろうか。城の中のベテランメイドであっても、アンドラーシュに声をかけてもらえないことなどざらであるにもかかわらず、「しかたないわねぇ」などと言いながら何かとソフィアに目をかけてくれていたのも、開戦前のグランパレスへの使者に抜擢したのも。籠城して守りに入った時に、逃げ出せる可能性の高い別働隊に編入したのも。すべてアンドラーシュの父親としての愛だったのではないだろうか。
「ごめんね、ずるい大人たちで。酷い世界で。」
「・・・多分わたしは、絶対にアンドラーシュ様を許せない。」
「ソフィアちゃん・・・。」
「でも、今私がここでこうしてレオくんの妻として、リィナさんと一緒にいる事や、ジゼルちゃんと友達になれた事や、エドや他のみんなと知り合えた事には感謝してる。だからわたしはあの人を許せないけど憎まない。中途半端かもしれないけど・・・今のわたしにできるのはこれが精一杯。」
 ソフィアの言葉を聞いて、リィナの顔に笑みがこぼれた。
「レオの奥さんがあなたで良かったわ。本当に、いい子に育ったわね。」
 そう言って、リィナはもう一度ソフィアの頭を撫でた。