小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

グランボルカ戦記 4 父と子、母と子

INDEX|6ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 


「どうしたのソフィアちゃん。何だか落ち着かないみたいだけど何か心配事?」
レオとランドールが二人で出かけた直後からそわそわと落ちつかない様子のソフィアにリィナが尋ねる。
「・・・おじさんとレオ君二人だけで大丈夫かなって思って。」
「大丈夫よ、ああ見えてあの人って結構強いし。獣に襲われた位じゃケガもしないわよ。それに最近はレオだって相当鍛えているんでしょう?」
「そう言う事じゃなくて・・・。」
言いづらそうに口をつぐんだソフィアの様子を見て、リィナは得心いったように胸の前でポンと手を合わせた。
「ああ、ソフィアちゃんは二人が喧嘩するんじゃないかって思ってるんだ。」
「喧嘩位で済めばいいんだけど・・・。」
レオがランドールに対してどんな思いを持っていたか。それを誰よりも近くで見て来たソフィアは下手をすればレオがランドールに本気の決闘を挑むのではないかと心配していた。
「大丈夫よ、何だかんだ言ったって父子なんだもの。きっと二人仲よく立派なマスを釣って帰ってくるわ。さて、じゃあ私達はそろそろ二人が釣ってくるマスをおいしく料理する準備をしましょう。もちろん手伝ってもらえるわよね?」
「はいっ、もちろんです師匠。」
ソフィアはそう返事をして立ち上がると調理台の前に立ってつけ合わせの野菜を切りだした。その手際の良さは、普段ドジばかりしているソフィアからは到底想像のつかない物だった。
「あら、相変わらず手際が良いわね。さすが私の教え子。でも大丈夫?ちゃんとレオの前では適度にミスしたフリている?」
「あ、はい・・・でも時々本当にミスしちゃったりしてジゼルちゃんに怒られる事も多くて。」
「ああ、確かにジゼルちゃんは完璧主義者だから叱られちゃうわよね。ただ、昔から言っているけど、レオってあれで面到見が良いからちょっと位手のかかる子のフリは大事よ。あの子出来ない子の面到見がいい分、できる人間には厳しいから。」
そう言ってリィナはパイ生地を練りながら笑った。
「そう言えばジゼルちゃんは元気にしている?この間ソフィアちゃんからもらった手紙には恋人が亡くなったって書いてあったけど・・・」
「・・・大丈夫そうに振る舞っているけど本当の所はよくわからないです。昔からジゼルちゃんは嘘つくの上手だったから。」
「そっか・・・それならジゼルちゃんも気分転換がてら一諸に帰ってくればよかったのにね。そうすれば私の料理で嫌な事なんか忘れさせてあげたのに。」
「でも好きな人の事を忘れるなんて、きっとそう簡単にできないですよ。私だって、もしレオ君が・・・なんて考えると、それだけで震えが止まらなくなっちゃいます。」
「それでもね、忘れなきゃいけない事ってあるのよ。もちろん相手の事を忘れろって言っている訳じゃないの。でも、特にあの子の場合は・・・。」
「ジゼルちゃんの場合・・・ですか?」
「・・・ごめん。今の忘れて頂戴。」
「何か、隠しています?」
「あら、そんなことないわ。」
 リィナはそう言って笑ったが、ソフィアはリィナのこの表情が何かを隠している時のものであることを知っていた。
 そして、その表情を見たソフィアは前々から気になっていた事をリィナにたずねてみることにした。
「前から気になっていたことがあるんですけど、聞いてもいいですか?」
「良いけど、聞きたいことってなにかしら?ジゼルちゃんの事?」
「それもありますけど、聞きたいのはわたしのお父さんのことなんです。」
「あら、それならルチアに聞けばいいじゃない。きっと惚気混じりで教えてくれるわよ。」
「お母さんは嘘をついています。」
 ソフィアは普段の彼女からは想像もつかないような険しい表情で断言する。
「わたしのお父さんは船乗りの風来坊で、この街の港にやってきた時に恋に落ちたなんて言っていましたけどそんな事ないと思います。」
「あら、どうして?」
「あの寂しがりのお母さんが、すぐにいなくなるってわかっている人を好きになるはずがないんです。」
「そうかしら、ルチアはソフィアちゃんにろくでもない男をあてがおうとする位に男を見る目がないんだし、勢いでって事もあるんじゃない?」
「あれは、リィナさんの差金だったんですよね?この間酔ったお母さんがそう言っていました。・・・わたしのお父さんの事は全然口を割りませんでしたけど。」
「・・・・・・」
「リィナさんは知っているんですよね?わたしのお父さん。」
「どうしてそう思うのかしら。私がこの街にやってきたのはランドールが駐セロトニア大使になってから。ソフィアちゃんが産まれた後のことよ。それまでにルチアが誰と付き合ってあなたを身ごもったかなんて、私は知らないわ。」
「嘘です。リィナさんはわたしが生まれる前にジゼルちゃんとアンドラーシュ様と一緒にこの街に来ています。ランドールおじさんが大使になったのはその後のことです。」
 そう断言するソフィアの指摘を聞いてリィナは観念したような表情でため息を漏らした。
「・・・本当によくできる子よね、ソフィアちゃんは。そういうのレオに嫌われるわよ。」
「レオくんは今更そんなこと位じゃわたしのこと嫌いになりません。」
「まあ、憎たらしい。あの子の母親としてはあまり面白くないセリフね。・・・でもまあ、そこまで調べてきたならお父さんの目星もある程度ついているんでしょう?」
「はい。そう考えればいろんな事に辻褄が合うんです。わたしの事も、ジゼルちゃんのことも。」
「そう・・・辻褄が合ったのなら多分それが正解よ。そしてそれが、私達の選択。・・・いいわ。まだレオ達が帰ってくるまで時間があるし、少しお話しましょうか。あなた達が産まれた頃の話を。」