小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

グランボルカ戦記 4 父と子、母と子

INDEX|5ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 

「つーわけで、俺達は時期が来るまで一応バルタザールに従ってるっていう体を保ってるわけだ。俺やエリザベスが指揮をとってりゃ、少なくともデミヒューマン共が暴走するなんて事にはならないからな。」
「・・・この事、母さんは知ってるのか?」
「話してない。だけどあいつも俺に話してないことがあるみたいだし、別にいいんじゃないか。俺たちはずっとそうやってきたし。」
「・・・よく、わかんねえ。」
「別にわかる必要はねえよ。これは俺とリィナのやり方。お前とソフィアちゃんもそうしなきゃいけないってわけじゃない。」
「でもいいのか?もしかしたら母さんは親父のことずっと誤解したまま・・・もしかしたらそのまま終わっちまうかもしれないんだぞ。」
「は。終わるって何だよ。俺が死ぬとか思ってるのか?バカにするな、俺はお前の百倍は強い。大体リィナの奴が俺のこと誤解するわけないだろ。いいかねレオくん。お前が生まれるよりも前から俺とリィナの付き合いはあったし、お前が寝ションベン垂れてる横で俺達は愛を語らってたわけだ。その俺達の間で今更誤解なんて起こるわけがねえんだよ。好き勝手やってたって、最終的にあいつは俺の期待を裏切らないし、俺もあいつの期待を裏切らない。それで万事オーケーってわけだ。」
 そう言ってランドールが竿を上げると、釣り針の先には見事な大きさのサクラマスがかかっていた。
「な?俺はリィナの期待通りちゃんとマスを釣っただろ。そしてこのマスをあいつは俺の期待通り美味しいパイにしてくれる。」
「つーか、アンタ達の期待とか、裏切る裏切らないのってのはそう言うことかよ。」
「まあ、延長線上の話だな。いつだって俺はあいつの人生のヒーローで、あいつは俺の人生のヒロインだ。」
 そう言ってランドールが笑い、レオは冷めた目で父を見て、ため息をひとつこぼした。
「へいへい。結婚してから20年もたってるってのに、お熱いこって。・・・でもさ、親父。それならやっぱりアレクについてやったほうが早いだろ。そうすればもう少し進軍するスピードも・・・。」
「駄目だな。あいつはバルタザールを倒した後で、皇帝にならなきゃいけない。それには相応のカリスマが必要になってくる。それをお前、バルタザール時代の中心メンバーを使って倒しましたなんて言ってもカリスマもなにもあったもんじゃないだろ。だからあいつはゆっくりでも自分の足で、自分の仲間と一緒に戦わなきゃいけねえんだよ。カーラがそっちに居るのは・・・まあ、元旦那が元々そっちにいるからなんとでも体裁は整えられるわな。あと、正直なところ、カーラは味方にすると面倒くさいから個人的に味方にしたくない。」
「面倒くさい?カーラさんが?」
「ああ。あいつはああ見えて頑固で、変に優しいからな。事情を話して説得して仲間にしたところでこっちとしては使いづらいにも程があるんだよ。例えば今俺が話したような事を伝えたら、きっとあいつはバルタザールも救うとか言い出すだろうな。」
「ああ・・・確かに言い出しそう。」
「とは言え、カーラなら本当に救っちゃいそうだけどな。・・・でもまあ、それで命を救われた所で、あいつにはもう拠り所なんかないんだ。それこそシモーヌのそばに行かせてやるのも友としての優しさってもんだろ。」
 そう言って笑うランドールの表情には、友人であるバルタザールに対する憐憫の情が浮かんでいた。
「・・・・・・。」
「ま、俺とエリザベスの考えってのはこんなとこだ。・・・お前この話、誰にも言うんじゃねえぞ。それこそソフィアちゃんやクロエちゃんにもな。」
「言わねえよ。つか、こんな話、万が一エドやアレクの耳に入ったら、あいつらもカーラさんみたいな事言い出すに決まってるからな。ここで、そんな方針転換したらヘクトールのおっさんはともかく、リシエール騎士団のお歴々と事を構えることになっちまう。」
「お、よくわかってるじゃねえか。・・・まあ、裏舞台はともかく、表舞台的には私利私欲にまみれて悪政を強いる皇帝を皇子が倒して、皇帝が潰しかけた国も復興、皇子とお姫様はいつまでも幸せに暮らしました。・・・ってのが一番わかり易いだろ。」
「でも、あんたはどうするんだよ。全部終わった後でアレクに事情を話したって、バルタザール派の人間として顔だって売れちゃってるし、指名手配なんかはされないまでも、もうグランボルカ国内にはいられないだろ。」
「それならそれで、リィナと二人でこっちでのんびり暮らすし別にどうってことねえだろ。・・・毎日こうやって釣りでもして、たまにルチアのとこで働いて日銭をかせいで。んで、年に一回でも二回でも、お前とソフィアちゃんが孫を連れて帰ってきてお小遣いあげたりしてな。」
 そう言ってランドールはクククっと笑い、その、本当に普通の父親のようなランドールの表情を見たレオは再びため息をついた。