十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>
約束の時間に未咲の通うお嬢様学校の校門の前に立っていると、学校帰りの中学生や高校生がいくつかのグループになり、キャーという黄色い声を上げながら俺の横を通り過ぎていく。まるで有名人を目撃したかのような反応に俺はため息をついた。ああ、面倒臭い。どうしてこうも目立ってしまうのだろう。数十分突っ立っているだけで何人の女子に話しかけられたかわからない。メアドを教えてくださいだとか、彼女いるんですかだとか、だいたい聞かれることはいつも同じなのだ。静かに、いや普通に暮らしたいだけなのに、それすらも叶わないのか。考えてみれば昔からそうだった。物心がついた頃には、周りから美形だとかかっこいいとか、そういうことばかり言われていた。幼い頃は自慢の息子だと喜ぶ母さんを見て、自分自身を誇らしく感じていた。だが、中学校に入った頃あたりからだんだんと嫌気がさしてきた。外見なんて所詮ただの被り物でしかないのに。綺麗な色の服を着ている人もいれば、すすけた色の服を着ている人もいる。自分の好みも反映されるだろう。虹色を見て「美しい」と褒める人もいれば、「色が多すぎて嫌」と感じる人もいる。中には破れた服を着ているせいでモテないグループに分類されてしまう人だっている。俺はたまたま万人から愛されるデザイン、そして多くの人を魅了する色の服を着て生まれてきた。ただそれだけの薄っぺらい事実で周りから称賛される。あたかもそれが世界の絶対基準であるかのように。
作品名:十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章> 作家名:朝木いろは