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朝木いろは
朝木いろは
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>

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 しばらくしてマスターがパンケーキを四つ持ってきて、俺たちの目の前に置いた。 パンケーキは顔の半分くらいの大きさで、三枚積み重なっていた。パンケーキとパンケーキの間からは木苺のハンドメイド(らしい)ソースがたっぷり浸み出てきている。本場カナダの香り高いメイプルシロップと、トッピングされた生クリームが品良く一番上のパンケーキに乗っかっている。
「これはおいしそうですね」
「アタシのお気に入りよ。まずは食べてみて」
 俺たちは言われるまでもなく、一秒でも早くパンケーキを口に運ぶため、無言でナイフとフォークを動かした。
「生クリームが全然くどくないですね。メイプルシロップの甘さにも嫌味がないですし。最高の組み合わせです!」
 大がいきなり大声を上げた。
「ホンマにイケるわ」
「もう一皿注文させていただきたいのですが」
「おいおい、まだ食うのかよ」
 俺は思わず大に突っ込みを入れた。
「大ちゃん、これ以上太ったら憧れの先輩には近づけないわよ。外見の改造計画なら私に任せて。超スーパーハンサム大ちゃんになって、女の子をブイブイ言わせる作戦よ」
「ブイブイって……。実は涼ちゃんさんって若いフリして中年ですか?」
 大はぼそっと呟くように言った。
「エセ関西人のオネエ中年か! そりゃウケるわ」
 黒野もゲラゲラと大声で笑い始めた。
「なによ、ヒドイじゃないの! あたしを年寄り扱いしないでちょうだい! それに涼ちゃんさんって何よそれ。中国人みたいじゃないのよ」
 三人のやり取りを聞いているうちに、俺の口元にも自然と笑みがこぼれた。こんなふうに腹の底から楽しいと思えたのは何年振りだろう――。