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朝木いろは
朝木いろは
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十七歳の碧い夏、その扉をひらく時 <第二章>

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「どうしたの?」
 自宅のドアを開けると、玄関まで出迎えに来た母さんが驚いたような声を出した。
「いやに暗いけど」
「そうかな」
「お医者さんに何か言われた?」
「いや、傷はもう治ったって。今日で終わったよ」
「そう、良かった。けど今回は本当にひどい目にあったわね。躾のできてないバカ犬は外を歩かせないでほしいわ。飼い主も飼い主なら犬も犬よ。うちに謝罪にも来ないで。こっちがその気になれば訴えることだってできたのよ。うちの大事な一人息子に怪我を負わせるなんて!  それも身体に残るような傷を……」
「飼い主には治療費をもらったんだし。それに俺にはちゃんと謝ってたから」
 母さんはまだ白崎の犬を責めているようだ。この分だと事あるごとに一生言い続けるかもしれない。――どうしてだ? どうしてこんなに俺を擁護しようとする? 過保護過ぎやしないか? 胸にじわじわと母親に対する疑問が広がった。これまでの人生、俺は母さんの言うことを肯定して生きてきた。だけど、この頃は少し違う。小さなことにいちいち違和感を抱いてしまう自分がいる。